第96話 慕われている
「あっ…!ハル戻って来た!」
「やっと合流し直せましたね」
「…お昼もう過ぎてますよ、凛華兄さん」
「あぁ…うん、ごめん。体育館行ってたんだ」
「…体育館ですか?」
「兄さん、スマホ体育館に置きっぱなしだったから」
「…どおりで連絡つかないと思ったら…」
しかもスマホを片付けたのが演劇の前だったからマナーモードだったせいで誰も気付かなかったという始末。
マジで探すの時間かかった、屋上とか行ってる場合じゃなかったし…。
……というか、遥香流石に言わないだろうな…?
まさかこの歳になって妹に泣きついて慰められてたとか、誰にも知られたくないんだけど。
遥香はいつもの様に全部察していた様で、俺の事を抱き締めてくれた。
どうやら、屋上に来る前に椿とすれ違ったらしい。
それだけで何もかも理解するあたり、本当にエスパーだと思う。
「…リン先輩、何かありました?」
「ん、なんで?」
「……なんか、目元赤いですよ…」
如月お前その鋭さどっから身に付けたんだ?誰と一緒に居たせいだろうな?
「さっきまで、椿ちゃんに絡まれて泣いてたから」
「ちょっ…遥香!?」
何で包み隠さずに言うかなぁ、俺の尊厳は何処行ったんだよ!
「…黒崎さん来てたんですか…?」
「……まあ、うん」
「もう、大丈夫なんですよね?」
そう聞かれて、少し悩んでから頷いた。
「…あぁ、大丈夫。もう椿と関わる事は無いよ」
「もう良いです、そういう余韻みたいなの。凛華兄さんが合流したんですから、さっさと行きましょう」
「ん、そうだね。早くいこ」
誰のせいで話が伸びたと思ってんだ妹よ。
噛み締める時間ちょっとくらいは……って、いやまあ…遥香からしたらもう流石にうんざりだよな。
言葉には出さないが、彼女は俺と遥香の事でさんざん話に巻き込まれてる訳で。
「…それで結局、何処行くんだ?」
「お昼をまだご飯食べてないので」
「……俺の事待ってたの?」
「当たり前でしょう」
至極当然だと言わんばかりに雫が頷くので、思わず苦笑いが溢れた。
何でこんな俺の事を皆して慕ってるんだろうな。
「…分かった、待たせて悪かったよ」
「いいですよ〜リン先輩は気にしないで下さい」
「あぁそうだ、それで思い出したんだけど…」
「なんですか?」
「男装喫茶って放置しといてお前ら大丈夫なの?確か午後の担当だったろ」
「「「「あっ……」」」」
…なんだろ、これ半分は俺のせいなんだけど…俺は悪くないんじゃないかな…と。
ふと、クラスの違う朝比奈さんが提案してきた。
「なら、私達も一緒にそっちでご飯食べよ?軽食とかあるでしょ?」
「…あ、それ良いかもな。よっしゃ行こうぜ」
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