第7章 16 身辺警護の申し出
「どうもお待たせいたしました。リヒャルト・シュバルツでございます」
リヒャルトは3人の警察官の前に現れると挨拶をした。スカーレットとアリオスは隣の部屋で様子を伺っている。
「シュバルツ様、すっかり元気になられたようで安心致しましたよ」
ベルンヘルで会ったリーがあの時とはまるきり違う丁寧な態度でリヒャルトに頭を下げて来た。しかもスーツ姿である。
「はい。お陰様でこの通り、もう何の問題もありません。それにしても驚きです。まさか…貴方が警察官だったとは」
リヒャルトは感心したかの様にリーに言う。
「ええ。よく言われます。あ、私の本名は『リカルド・フランチェスコ』と申します。どうぞリカルドと呼んで下さい」
するとリカルドの隣に座る口髭を蓄えた男性が言った。
「彼は潜入捜査が主な警察官なのです。まだ若いですが敏腕警察官ですよ」
「ええ、そうですね…それはもう良く分かります」
リヒャルトは頷いた。
「あ、申し遅れましたが、私はベルンヘル警察署の副所長レナート・スミスと申します。そして、こちらは…私の部下のジャック・ブラウンです」
レナートは隣に座る赤毛の男性を紹介した。
「はじめまして」
ジャックは挨拶をした。
「はじまして」
3人との挨拶を済ませるとブラウン副所長が言った。
「実は本日こちらへ伺ったのはシュバルツ様の身辺警護をさせて頂こうかと思って参ったのです」
「え?身辺警護ですか?」
リヒャルトに緊張が走る。
「あの…それは一体どういう意味ですか?」
「はい。実は彼等が貴方の行方を追っています」
「え?」
「彼は貴方が『ベルンヘル』から消えたことで行方を追っているのです」
「彼…と言いますと…?」
リヒャルトはゴクリと息を飲んだ。
「もちろん、署長ですよ」
リカルドが言った。
「貴方は彼の犯罪に巻き込まれた生き証人ですからね。貴族だったから色々使い道があると思い、手元に置いてアヘン漬けにしたのでしょう」
「そう…ですか」
リヒャルトの背中にゾッとしたものが走った。
「あの、実はこれから『リムネー』に帰ろうとしていたのです。ヴィクトール達と合流しようと思っていたので」
「なら、私達が身辺警護に当たらせていただきます。私はもう『ベルンヘル』に戻らなければならないのですが、代わりにこのリカルドとジャックを警護につかせます。本当は私も付き添いたいのですが…立場上あまり長期間不在だと、署長に怪しまれてしまうので」
レナート副所長は申し訳無さそうに言う。
「でも…本当に身辺警護をお願いしてもよろしいのでしょうか?」
「ええ、勿論です。ただ万一の為に、全員変装して頂けますか?念には念を入れないといけませんので」
「分かりました…」
リヒャルトは頷いた。
そして、出発までの時間までに3人の男たちは変装する準備を始める事になった―。
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