第7章 14 訪ねて来た人物
翌日―
今、リヒャルトはスカーレットの部屋で親子水入らずの朝食を食べていた。
それが叶ったのはアリオスが親子水入らずで食事をとったほうが良いだろうと気を利かせてくれたお陰だった。
「お父様。今日は何時にここを出発されるのですか?」
食後のコーヒーを飲みながらスカーレットはリヒャルトに尋ねた。
「ああ、11時の汽車に乗ろうかと考えているんだ」
同じくコーヒーを飲んでいたリヒャルトが答えた。
「11時ですか…」
スカーレットは時計を見た。部屋の時計は午前8時半を指している。『ミュゼ』の駅までは馬車で30分はかかる。と言う事は…。
「お父様とは、後2時間も一緒にはいられないのですね…」
「すまない…。今はゆっくりしていられないのだ。分ってくれるな?」
「はい」
その時―
コンコン
部屋の扉がノックされた。
「あら?誰かしら?」
スカーレットは立ち上がり、ドアに向かうと声を掛けた。
「どちら様ですか?」
すると扉の外から声が聞こえてきた。
「俺だ、アリオスだ」
「え?アリオス様?」
驚いて扉を開けると、そこには神妙そうな顔つきをしたアリオスが立っていた。
「アリオス様。一体どうされたのですか?」
「実は…あまりこの話はリヒャルト様の前では…しない方がいいと思うんだ‥。少し廊下へ出ないか?」
「え?ええ、分りました」
そしてスカーレットはリヒャルトに声を掛けた。
「お父様。申し訳ありませんが、アリオス様が私にお話があるそうなので廊下で少し話をしてまいります」
「あ?ああ…。内密の話なら…私は部屋を出ようか?」
椅子から立ち上がりかけたリヒャルトをアリオスは止めた。
「いえ、すぐに話は済みますので、少しだけこの部屋でお待ち下さい」
「お父様。待っていてね」
そしてスカーレットは廊下に出ると扉を閉めると、アリオスがすぐに口を開いた。
「実は…つい先程『ベルンヘル』の警察官を名乗る3人の人物が屋敷を訪ねてやってきたんだ。一応応接室へ案内はしたのだが…果たして彼らが我々の敵なのか味方なのか俺には区別がつかなくて…それで相談にやって来たんだ。だが、彼らはリヒャルト様の味方だと言っている」
「え?で、ですが…何故その警察官の方々はお父様がこの屋敷にいる事をご存じだったのでしょう?」
スカーレットはそれが謎で仕方が無かった。
「ああ。俺もそう思ったから何故リヒャルト様の居場所を知っているか尋ねてみたんだ。彼らの話ではヴィクトールから手紙を貰い、この屋敷にいる事を知ったらしい。一応手紙も預からせて貰ったのだが、本物かどうか怪しくて…」
「手紙を預かったのですか?ひょっとするとお父様ならその手紙が本物かどうか分るかもしれません」
「本当か?」
「はい。ヴィクトールはお父様の一番の執事だったので、筆跡を見れば本物かどうか区別出来るかもしれません」
「なら、すぐに頼んでみよう」
「はい」
そして2人は部屋の扉を開けてリヒャルトの元へ向かった―。
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