第5章 3 偶然の再会
アリオスが手配したホテルは観光地『リムネー』の中でも一番高級なホテルだった。しかもジュニアスイートの部屋を2部屋手配してあることにスカーレットとブリジットは驚きを隠せなかった。
カチャリ…
スカーレットはアリオスが手配してくれたブリジットと2人で宿泊する部屋の扉を開け、あまりの豪華さに息を飲んだ。
「まあ…!何て素敵なお部屋なのでしょう。」
ブリジットも感嘆の声をあげた。
南向きの大きな窓には『リムネー』の緑に囲まれた美しい景色が一望できる。窓際に寄せられた座り心地の良い応接セットの奥のへやには豪華なダブルベッドが2台並べられている。部屋に飾られた大きな絵画にはシュバルツ家の所有する美しい湖の自然公園が描かれていた。
「ブリジット、見て。湖の絵画よ」
「ええ、そうですね。」
「何だかほんの数カ月前なのに、すごく懐かしく感じるわ…」
スカーレットは油絵で描かれた美しい絵画を見つめながら感慨深いため息をついた。その時…
コンコン
扉がノックされる音とアリオスの声が聞こえて来た。
「スカーレット、もう準備は出来たか?」
(あ、アリオス様だわ。迎えにきてくださったのね?)
「はい、今開けます」
スカーレットは扉にむかい、カチャリと開けた。すると眼前にはアリオスとカールが立っていた。
「スカーレット、俺とカールはもう準備万端だ。どうだ?行けそうか?」
「はい、大丈夫です。アリオス様、カール様」
するとカールが言った。
「スカーレット様達のお部屋は白いカーペットなのですね。僕達の部屋は水色のカーペットなのですよ」
「まぁ。お部屋によって色も違うのですね。流石は一流ホテルですね」
スカーレットは笑みを浮かべてカールに言うと、ブリジットを見た。
「ブリジット、では行って来るわね?」
「ええ。どうぞお気をつけて」
そして3人はホテルを出た。
*****
ホテルの外に出て、両脇に様々な店が立ち並ぶ石畳の道カールとスカーレットは手を繋いで歩いていた。そこはのどかな田舎の風景で歩いている人々も『ミュゼ』とは違い、まばらだった。
カールは初めて見る町並に目を輝かせて、キョロキョロ辺りを見渡していたが、不意に顔を上げてスカーレットを見た。
「スカーレット様、僕早速湖に行ってみたいです」
「そうですね。時間もまだ午後の2時ですし、湖に行くのも丁度良い頃間と思います。いかがでしょうか?アリオス様」
スカーレットは自分たちの少し後ろを歩くアリオスを振り返ると尋ねた。
「ああ。俺は少しも構わない。全てスカーレットに任せる」
「では参りましょう。この通りをまっすぐ行くとやがて森が見えてきます。湖迄歩いて10分ほどで着くと思います。何しろ小さな町ですから」
「でも、とても綺麗な町並みでまるで絵本の中の世界みたいです」
カールは白い頬をピンク色に染めて興奮気味に言う。
「嬉しいですわ。カール様。私の故郷をそんな風に仰って頂けるなんて…」
「いや、本当に美しい町だ。君の家系の領地は本当に素晴らしい場所だな」
アリオスも感嘆したように言う。
「アリオス様…」
その時―
ドサッ!
背後で何か物が落ちる音がした。何事かと3人が振り向けばそこには青年が立っていた。それは…。
「スカーレット…まさか…君なのか?」
「え…?あ、貴方は…ジミー?!」
「ああ、そうだよ!ジミーだよ!」
ジミーの顔に笑みが浮かぶ。何とそこに立っていたのはスカーレットの幼馴染で厨房で働いていたジミーだったのだ―。
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