第4章 2 4人での夕食

 その日の夕食の席での事だった。いつものようにカールの自室の隣りにあるダイニングルームでカール、スカーレット、ブリジットの3人がテーブルに付いていた時、不意にアリオスが現れた。


「まあ、アリオス様」


「こんばんはアリオス様」


スカーレットとブリジットは交互に挨拶した。


「失礼する。俺も今夜はここで食事を頂いてもいいか?」


アリオスは現れるなり言った。


「アリオス兄様!勿論です。どうぞ僕の隣に座って下さい」


カールは満面の笑みを浮かべて自分の隣の空いてる椅子を引くと言った。


「ああ、ありがとう。カール」


アリオスはカールが引いてくれた椅子に座ると、彼の頭をなでた。


「ふふふ」


頭を撫でられたカールは嬉しそうに笑った。


アリオスが来たので、給仕をしていたフットマン達は慌ててアリオスの分の食事の用意を始めた。


「すまないな、突然現れて」


アリオスの言葉にフットマンは素早く頭を下げた。


「いえ、とんでもありません。そのようなお言葉をいただけるなんて光栄です」


そんな様子のアリオスを見ながらスカーレットは思った。


(アリオス様は使用人の方たちにも気配りのできる方なのね…)



 やがて全員の食事が用意されるとアリオスが言った。


「3人とも、突然俺が来て食事を待たせて済まなかった。それでは皆で頂こうか?」


「はい!アリオス兄様!」


カールは元気よく返事をする。

そんな様子のカールをスカーレットは笑みを浮かべながら見つめた。


(フフフ…カール様はアリオス様の事が大好きなのね)


「では頂こう」


アリオスの言葉に全員が返事をし、4人での夕食が始まった。


カチャカチャとフォークとナイフをならし、メインディッシュの魚料理を切り分けながらアリオスがカールに尋ねてきた。


「どうだ?カール。勉強は進んでいるか?」


「はい!今日は算数を勉強しました。僕、面積の求め方を理解することが出来ましたよ。後、歴史の勉強もしました。スカーレット様はすごく教え方が上手なんです」


「そうか、いつもカールをありがとう」


アリオスは笑みを浮かべてスカーレットを見る。


「いえ、私はカール様の家庭教師ですから当然です。それにカール様はとても利発なお方ですからこちらも教えがいがあります」


「そうか。それで今夜ここで食事を取るためにやってきたのは3人に話があったからなのだ」


「まあ、私にもですか?」


ブリジットが言った。


「ああ、そうだ。実はようやく今の仕事に目処が付いて少し休みが取れそうなんだ。だから皆でスカーレットの故郷に2泊3日で旅行に行ってみようかと考えているんだ。スカーレット」


不意に会話の途中でアリオスが声をかけてきた。


「はい、何でしょうか?」


「リヒャルト家の敷地には美しい湖のある公園があるのだろう?そこへ皆で行こう。宿泊先のホテルももう予約済みだ。急な話だが4日後に行こうかと考えている。」


「本当ですか?僕今からとても楽しみです。」


「ああ、俺も楽しみだ。旅行の間は勉強は休みにしていいからな?その代わり具合が悪くならないように体調管理はしておくんだぞ?」


「はい、分かりました」


「スカーレット、君の故郷なのだ。何処かおすすめの場所を考えておいてくれないか。ブリジット。君もね」


「はい、アリオス様」


「承知いたしました」


(嬉しい…やっと故郷の様子を見に行けるのだわ…)


故郷への思いにスカーレットの胸は高鳴るのだった―。

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