第3章 15 承諾

「あの、私でお役に立てるのであれば…パートナーを務めさせて頂きます」


スカーレットの言葉にアリオスが目を輝かせた。


「本当か?本当に頼んでも大丈夫なのか?」


「はい、私がパートナーになることでアリオス様の助けになるのでしたら、喜んでお引き受け致します。」


「そうか、それは助かる。確か、スカーレットはドレスをもっていないそうだな?」


「は、はい。お恥ずかしながら…。明日、町の洋品店でドレスを探してきます」


するとアリオスが言った。


「いや、大丈夫だ。それは案ずることはない。明日、この屋敷にチェスター家に御用達の仕立て屋がある。その者達にドレスを持ってこさせよう。スカーレットに合うドレスを見つけ、サイズ直しをしてもらうことにしよう」


「ありがとうございます、アリオス様」


「いや、お礼を言うのはこちらの方だ。引き止めて済まなかったな。では話しも済んだことだし、部屋まで送ろう」


「いえ、だいじょうぶです。1人で戻れますから」


「そうか?分かった。それならまた明日な。」


「はい、それでは失礼致します」


スカーレットは丁寧に頭を下げると部屋を出た。



 月明かりに照らされた長い廊下を歩きながら、スカーレットは窓を見上げた。夜空には大きな満月が浮かんでいる。


「綺麗な月…」


スカーレットはポツリと呟くのだった―。



****


 翌日―


朝食後、スカーレットはカールの部屋で算数の勉強を教えていた時の事だった。


「カール様、この公式を当てはめれば計算することが出来ますよ?」


「はい、分かりました」


スカーレットはカールに算数を教えていた。今教えているのは面積の求め方だった。

カールはスカーレットの教えた通りに計算を解いていく。


「…」


真剣に勉強に取り組むカールの姿はとても可愛らしかった。


(フフ…カール様、真剣に勉強に取り組んでいらっしゃるわ…)


やがて、カールは鉛筆を置くとスカーレットを見た。


「スカーレット様、出来ました。どうでしょうか?」


カールの広げたノートを見たスカーレットは目を細めると言った。


「はい、完璧な計算です。正解ですよ。本当にカール様は飲み込みが早くて賢いお方ですね」


スカーレットに褒められてカールは頬を染めた。


「い、いえ。僕が勉強出来るようになったのはスカーレット様のお陰です。な、なのでこれからもずっと僕の家庭教師をしていただけますか?」


この先…いずれスカーレットはシュバルツ家に戻るつもりだった。それがいつのことになるかは不明だが。しかし、許される限りスカーレットはカールの側にいてあげたいと思った。そこでカールに返事をした。


「ええ、カール様。勿論です」


「本当ですか?スカーレット様!」


「はい、本当です」


スカーレットが微笑んだその時、ノックの音が聞こえた。


コンコン


「カール、スカーレットはそこにいるか?」


それはアリオスの声だった。


「まあアリオス様ですか?」


スカーレットは席を立つと扉に向かった。


カチャ…


扉を開けるとそこにはアリオスが立っていた。


「スカーレット、仕立て屋が来たんだ。いま大丈夫か?」


スカーレットはちらりとカールを見た。


「僕なら大丈夫です。自習をしてますからどうぞ行ってきて下さい」


カールは笑顔で答える。


「すみません、カール様。では行ってきますね」


「カール。少し待っていてくれ」


アリオスもカールに声を掛けるとスカーレットを見た。


「では、行こうか?」


「はい、参りましょう」


そしてアリオスとスカーレットは連れ立って、仕立て屋の元へと向かった―。

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