第2章 14 体調を崩した原因とは
「何だ?何故カールの部屋の中へ入ってくる?」
アリオスはスカーレットが自分の後に続いて部屋の中へ入ってきたので訝し気に尋ねてきた。
「あ、あの…カ、カール様が…夕食の席にいらっしゃらなかったので心配で様子を伺いに参りました…。」
スカーレットはアリオスから距離を開け、恐怖と戦いながら必死で説明する。
「そうか…カールなら体調を崩してベッドで寝ている。」
アリオスは部屋の奥に置かれた天蓋付きのベッドをチラリと見ると言った。
「え?そ、そんな!あ、あの…お傍に行っても大丈夫でしょうか‥?」
「ああ、カールは寝ているが構わない。」
アリオスに許可をもらったのでスカーレットはカールの眠っているベッドにそっと近寄った。
「カール様…」
ベッドを覗き込むと、カールは赤い顔をしてハアハアと荒い息を吐いて眠っている。
「ど、どうしてこんな事に…?!お、お医者様はどうしたのですか?!」
スカーレットは距離を空けているアリオスに尋ねた。
「主治医ならもう来た。薬も飲ませてあるから後は寝かせておけばいいだろう。俺は少し様子を看に来ただけだからな」
「え?カール様がこんなに苦しんでいられるのに、まさか行ってしまうおつもりですか?」
スカーレットはアリオスが自分の雇い主である事も忘れて自分の意見を述べた。
「悪いが俺は忙しい身なのだ。まだたまっている仕事が山ほどある。カールの事で時間を費やしている余裕は俺にはないんだ」
「そ、そんな…!」
あまりにもアリオスの冷たい言葉にスカーレットは愕然とした。
「何だ?その不服そうな目は。俺はカールにやるべきことはやっている。大体、何故カールの具合が悪くなったか君は原因を知っているのか?」
「え?」
「今日、カールと一緒に庭を散歩しただろう?その時涼を得る為に緑道へ行ったそうじゃないか」
「は、はい。確かに行きました。」
「噴水前のガゼボに行って、30分程過ごしたそうだな?」
「そ、そうです。」
「君は厚着をしていたから分らなかったかもしれないが、あそこは真夏でも涼しい場所で気温は25度を下回っているのだ。あの時のカールの姿は半そでに半ズボン姿だった。かなり薄着だとは思わないか?」
「!」
(ま、まさか…?)
スカーレットは顔が青ざめていくのが分った。アリオスもスカーレットの変化に気付くと言った。
「カールは薄着をしてあの場に滞在していた為に恐らく風邪をひいたのだろう。昔から身体が弱く、喘息持ちだからな。それで学校にも通えていないのだ。」
「あ…」
「まあ、俺もカールの事をきちんと説明しなかった責任があるから今回の事…咎めるのはやめにしておく。」
「申し訳ございませんでした…私のせいでカール様の具合を悪くしてしまったのに・・当主様を責める言い方をしてしまって…」
スカーレットは頭を下げて謝罪した。
(ど、どうしよう…カール様に万一の事があったら…)
本当は看病を願い出たいが、カールの体調を悪くさせてしまった自分に看病することを許して貰えるとは思えなかった。それでもスカーレットは勇気を振り絞って恐る恐る尋ねてみた。
「あ、あの…カール様の看病を私に任せて頂けないでしょうか…?」
「ああ、頼む。」
アリオスはあっさりと言う。
「え?」
「何だ?その顔は…。君から言い出したのだろう?カールの看病を。」
「は、はい。確かにそうですが…まさかカール様の体調を悪化させてしまった私に看病の許可を与えて下さるとは思わなかったので。」
スカーレットは俯きながら言う。
「別にそれとこれとは関係ない。幸いカールは君に懐いているようだし、引き受けてくれると助かる。」
「はい、誠心誠意の気持ちを込めて看病させて頂きます。」
「そうか、では頼む。」
アリオスはそれだけ言うと、足早に部屋を出て行った。
「ふう~…」
スカーレットはようやく息を吐きだした。
(とても緊張したけど、何とかアリオス様とお話出来たわ…)
そして熱で苦しんでいるカールの枕元椅子を運んでくると、そっとカールの手を握りしめた。
「カール様…ごめんなさい…」
スカーレットは眠っているカールに謝罪するのだった―。
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