奇なりの真後ろ

ふと目に付いた本を 手に取って読んだ。

えがかれた登場人物たちは 朗々ろうろうあおいて生きている気がした。

興奮こうふんも冷めぬまま 外へ出た。

横断歩道のボタンを押す。そのまま空をあおいだ。

家に帰れば 雑事ざつじが残っている。


誰かの為に生きることも、誰かの為に死ぬことも、

さも簡単に叶う世界は、少し、うらやましく見えた。

諦めないなんてのは 子供の特権で、大人になるほど 妥協だきょうが未来を作っていく。

荊棘けいきょくを前に 何かを待てど、何も起こらず 時だけが ただ過ぎていく。

その度に 過去をうらみ、今をやり過ごし、未来に期待する。


どこかの詩には、追慕ついぼ憧憬どうけい陶酔とうすいうたわれていた。

それは あまりにも心地よい非現実で

そのままどこかへ連れて行ってくれそうな気がした。


玄関げんかんの鍵を開けた

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