第百三十二話

「助っ人って誰と誰を呼んだの?」


「さすがソフィア、よく見てる」


 ヘレナが持ち出したペーパーナプキンは二枚。ヘレナが現段階で使用出来る魔術は初級のみである。そして初級魔術で使用する媒体は一つのみなのだ。


「一人はダレオスさんだよ。ほらそろそろ約束の時間だからね、予定にはない面会があるからルーナさんに伝えなくちゃ。あと一人はまぁ、来てからのお楽しみ。とにかくスイーツには目が無いから相当な戦力にはなると思うんだけど、それでもダメならお母さんに押し付けようと思います」


 悪意しかないヘレナのその屈託のない笑顔に一同はかろうじて乾いた笑みを浮かべる。


「……というかよ、頼んだのはこいつ何だから責任もってこいつに処理させるぞ」


 そう言って顎でカサンドラを指すラクスライン。それに何か言いたげなカサンドラであったが確かに思うところもあるのだろう今はとりあえず近場のスイーツを目にも止まらぬ速さで吸い込んでいた。


「別に良いですよ、こういうのは食べれる時に食べられるだけ食べたもん勝ちです。それに最初から食べられない量を無理に頼んでいた訳では無いようですから気にしなくていいです。それにソフィアも私も頼んでないスイーツがこうして食べられて大満足だから気にしなくて大丈夫です、ね?」


 チーズケーキを食べながら嬉しそうに頷いたソフィアを見てラクスラインもそれ以上言うことは無いようだった。

 一息にコーヒーを飲み干すと目の前に積まれた普通のチョコレートの何倍も大きなチョコレートにかじり付く。


「こりゃあ、こいつが簡単に酔うわけだ…………というか、これ結構上物じゃないのか……ん? この味はシャルパン、こっちは───」


 それからもラクスラインはヘレナたちにはわからない銘柄を読み上げながらポイポイとチョコレートを口へと放っていく。ものすごい勢いでチョコレートが消えていく反面でラクスラインは更にそのスピードを加速させる。


「ラクスラインさんってもしかしなくても結構な酒豪?」


「う~ん、そうかも? 私、ラクスが酔ってるところ見たことないや」


 チュロスを片手にヘレナの何気ない疑問に答えるカサンドラであったがヘレナもソフィアも同時に同じことを思った「それは単純にカサンドラさんがお酒に弱すぎるからでは?」、と。声には出さなかったが目の合った二人は揃って愛想笑いを浮かべる。


「まぁ、そもそもラクスは王国の北部出身だからね。もともとお酒には強いのかな。あっちの人は火酒っていうお酒を浴びるように飲むって聞くから。ルーベティス大山脈の方? だっけ?」


「あぁ、シューネン伯爵領にあるちっさい村だ」


 どこかで聞き覚えのあるその言葉にヘレナが引っ掛かりを感じたその時だった。

 表の扉が勢い良く押し開けられる。


「お嬢様、ご要望にお応えすべく不肖セクタール屋敷よりはせ参じました」

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