失ったものは
「……走りたいな」
その言葉が親友から発せられた時、またかと私は振り返った。
「どこを?」
「うーん、どこか」
親友は手の中の本をつまらなそうに見つめながら、いつもの答えを口にした。
「どこか、広いところを」
走りたいな。
私はそっと目を剃らした。
ベッドの上の親友の足はもう、動かない。
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