アンケート(仮)
@masaroom
第1話
瞳は自転車で大学へ向かう途中、商店街の中をスピードダウンせず慣れた感じで疾走している。背中に背負うナップサックにはギターのキーホルダーがぶら下がっている。花屋からラジオの音が流れてくる。
『今チャート急上昇中のこのナンバー、なんと現役女子大生がインディーズで発表したものだそうです。それではお届けしましょう。hitomiで♪JUN JUN JUN♪』
ふと自転車をとめかけた瞳。顔色変えず再び強くこぎ始める。商店街の店主と客。『そういえば最近、スマホにアンケートよく来るよね。結構色々聞いてくる。なんでも丸茂市の市民は基本答えなきゃいけないらしいよ。』『なにそれ⁉️面倒臭いなぁ』『確か高嶋さんとこのオバさん、アンケートから何かが当選したそうで、今度受け取りに行くらしい』『えーっ!賞品つき!俺んとこにもメール来ないかなぁ』
気持ちよさそうに自転車を運転する瞳。
(丸茂市拘置所)男が更衣室で、着替え中。ハンガーにかけられた名札には"石田"。イカツイ制服からサッパリした普段着になった友介。エレベーターに乗り込み1階を押す。(エレベーターホール)9階のドアが開く、友介は乗り込み1階を押す。階下へ移動していく。
(1階の職員用出入口)警備員に無愛想な会釈して出ようとする。そこですれ違う男性。『石田君、お疲れ様』鈍い眼光の初老の男。
『所長・・お先に失礼します』
ようやく口を開いた友介。
ビルを出ると、丸茂市の中心街。高層ビルが点在しているが、古い建物もあり、雑多な街並。友介は駅へ向かうが、慣れた足取りで普通の人は通らないような裏道をどんどん抜けて行く。大通りよりはいくらか時間節約になるのだろう。
隙間道から通りへ飛び出そうとしたところ、(後ろから声)『友介さんっ!』、振り返る友介『あぁ永田、どうも』
いかにも半グレな風体の永田。目をキラキラさせながら、友介に近づいて来る。『先週はありがとうございました。小宮が友介さんには良くしてもらったって感謝してました。無事、出所できたのも友介さんのおかげだって』『お前と違って初めてだったみたいだな』
<他愛もない雑談>
『ところで最近スマホにアンケートきません?ウチの兄貴のもっと上の方が、なんかヤバいって言ってますよ。拘置所の近所に関係者がうろついてるそうです。気を付けてね~。友介さん何か困ったらいつでも言ってくださいね、受けた恩はきっちり返す主義なんで!』
『俺は別に何もしてあげてないよ。。それじゃ』
永田が軽く会釈して、駅の反対側へ去っていく。
彼が去るまで見送る友介。虚な瞳。
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