双子勇者、最弱魔王に強制転職

広茂実理

序章

◆◆◆

 魔王が姫を攫って、一年。

 数々の魔王討伐隊、勇者一行が魔王の元へと勇んで向かったが、誰一人として同じ姿で帰る者はいなかった。

 命からがら逃げ延びた者の証言では、姫は無事とのこと。

 漆黒の髪と目をした魔王が、森の奥深くにそびえ立つ城の玉座で姫をそばに置き、やって来る者たちを次から次へと大剣で薙ぎ払い、魔法で焼き払い、ふんぞり返っているのだそうだ。


 しかし、それもこれまで――


「もうすぐだね!」

「うん。もうすぐだ」

「準備はいい? ダレン」

「いつでも良いよ、エレン。おれたちが、必ず魔王を倒し、姫を救う!」

「気合十分ね。相手にとって不足なし! 暴れまくるわよ!」


 稀代の天才双子勇者と謳われた、金髪の少年少女。

 若干十五歳でありながら、その手に操る大剣と銃の腕前は飛び抜けており、現魔王討伐隊の中では、一番の期待を寄せられていた。

 たった二人のパーティーではあったが、旅の途中で大地の精霊を仲間にし、とうとう一行は魔王のいる玉座の間の前までやってきていた。


 その扉の向こうで、二人は知る。

 この世界の、の真実を。


 ――現魔王の正体を……。


「まさか……魔王って……」

「来てしまったんだね。ダレン、エレン」


 これは、金髪のが世を統べる物語である――

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