第二十六話 クーデター鎮圧作戦③


 パーティーホールの敵を制圧した僕は、通信機でクルトに救出成功を告げる。


 『わかった。じゃあ俺達は今から攻め込むから父上達を頼む』


 『わかりました、気を付けて』


 クルトとの通信を終えて、皇帝陛下に現在の状況を説明する。


 「そうか、現在クルトが率いるクーデター鎮圧軍とテルナー率いるクーデター軍が戦っているのか」


 「はい、シュライゼムの街では光迅流剣士達に暴動を起こさせています」


 「そうか。ならば余も行かなければならないな」


 「陛下、外は危険です。外はクルト達に任せて城で待っていましょう」


 「それはできん。暴動に巻き込まれている民衆がいるかもしれんのだ。民を城に避難させる為に、民達を城に誘導する者が必要だ。余以上の誘導灯があると思うか?」


 確かに陛下が誘導してくれればスムーズに避難させる事ができる。


 それに陛下の表情を見る限り、その意志は揺るがなそうだ。


 「···わかりました。陛下は僕がお守り致します」


 「うむ、頼む」


 他にもアルバート殿下や数人の貴族が避難誘導を手伝うと声を上げてくれたけど、守る対象が増えるのでお断りさせてもらった。


 城の兵士や宮廷魔導師の殆どを城の守りとして残して、陛下の護衛として五人の兵士とマルタを連れて行くことにした。


 城の門番をしていた敵兵を倒して、シュライゼムの街へと向かうと、民を守りながら戦っている光迅流剣士達と民を人質にしようとしている敵兵士達が剣をぶつけ合っていた。


 その様子を見た皇帝陛下は大きな声で告げる。


 「皆の者よく聴くがいい!! 城の人質は迅王ルートヴィヒの手によって救われて城は開放された。民達よ、城へと避難するのだ!! そして光迅流の剣士達よ、死ぬ気で民を守るのだ!!」


 皇帝陛下の言葉で民衆は城へと走り出す。


 そうはさせまいと敵兵士達が追いかけようとするけど、光迅流の剣士達が立ち塞がる。


 陛下の護衛をしながら敵兵士達と光迅流の剣士達の戦いを見ていると、陛下が僕に視線を向ける。


 「迅王よ、余の事はこの六人の護衛に任せて敵兵士達の制圧に手を貸してやるのだ」


 「しかし、今一番この場で危険なのは陛下です。放って行く事は出来ません!!」


 この場を離れる事を渋っていると、マルタが僕の肩に手を置きながら話しかけてくる。


 「ルートヴィヒ、私達を信じて!! 私達は命を賭けて陛下を守るから、ルートヴィヒはこの戦いを終わらせる事に力を使って!!」


 マルタの言葉に五人の兵士も頷き僕を見てくる。


 マルタ達の意志は固いようだ。


 「···わかりました。皆さん皇帝陛下を頼みます!! 陛下行って参ります!!」


 「うむ、頼んだぞルートヴィヒ!!」



 皇帝陛下の護衛をマルタ達に任せた僕は、敵兵士達を斬り伏せながらシュライゼムの門の前まで進む。


 そこでは闘王とメルト先生の戦いが起きており、その戦いの激しさのせいで敵兵士達や光迅流の剣士達は距離をとっている。


 だが戦いはメルト先生の方が不利だ。


 僕は瞬歩で駆けて、メルト先生の鳩尾に放たれようとしている掌底を剣で防ぐ。


 掌底が放つ衝撃波で僕とメルト先生は後方へと吹き飛ばされる。


 空中で一回転して着地した僕は、同じく着地したメルト先生に視線を向ける。


 「メルト先生、皇帝陛下達の救出は成功しました。闘王の相手は僕がします。メルト先生は民衆を城へと誘導して下さい!!」


 「あぁ、わかった。悔しいが、僕では闘王に勝てそうにないからね。頼んだよルートヴィヒ」


 悔しそうな表情を浮かべながらメルト先生は民衆の誘導へと向かう。


 「という訳であなたの相手は僕がします」


 闘王に視線を向けて剣を構えると、嬉しそうに拳を構える闘王ヤン·ジェウ。


 「君と一対一で闘えるなんてラッキーだ。さっきの剣士は正直弱くて退屈だったんだ」


 闘王は笑みを浮かべながら縮地で僕に近付き掌底の連撃を放つ。


 それを避けながらレヴァンティンを身体と剣にエンチャントする。


 白いオーラを放つ僕を見て嬉しそうに瞳をギラつかせる闘王。


 「ははっ、楽しい戦いになりそうだ!!」


 拳と剣がぶつかり合って激しい衝突音が鳴り響く。


 闘王の掌底や蹴りなどの変則的なコンビネーションはタイミングをとるのが難しく、避けるのも一苦労だ。


 だけど同じスピードタイプで、速さでは僕の方が速い為、戦いの経験値が僕より高い闘王相手に良い戦いが出来ている。


 「う〜ん、やっぱり十二星王に選ばれただけあって強いなぁ。楽しい楽しい時間なんだけど、楽しんでばかりもいられないんだよね」


 闘王の目つきが変わり、先程と違う構えをとる。


 まずい、何か強力な一撃が来る!!


 僕も光迅流六の型瞬光の構えをとる。


 「烈華拳法奥義天鳳拳!!」


 「光迅流六の型瞬光!!」


 最速の技と最速の技がぶつかり合おうとしたその時、シュライゼムの防御壁が突如崩れ門も崩壊した。


 大きな土煙が起こり、闘王と僕は戦うのを中断する。


 土煙が薄れ始めると、いくつもの獣の顔がついた巨大な脂肪の様な塊が崩れた門の上に現れていた。


 「な、何だあれは!?」


 あまりの巨大さに驚いていると、闘王が苦虫を噛み潰したかの様な表情で巨大な謎の生物を見上げる。


 「ちっ、まだまだ闘いを楽しみたかったのに時間が来ちゃったよ。···残念だけど、僕の仕事は一先ず終わったみたいだ。また闘おうね迅王」


 そう言うと闘王は何処かに去っていった。


 闘王との戦いはとりあえず終わったみたいだけど、この巨大生物からは凄まじい殺気を感じる。


 戦いはまだまだ終わりそうにないみたいだ。

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