第二十三話 迅王VS三人の十二星王
城から脱出したミハエル大将軍からクーデターの事を聞いた僕は、光迅化して急いで城まで駆けて城の扉を突き破ると、クルトの身を蒼い炎が包もうとしていたので、それを斬り裂いた。
「待たせました、クルト」
声をかけながらクルトを見ると、今にも倒れそうな程ボロボロだ。
「あとは任せてください」
クルトにパラケルトさんお手製の回復薬と魔力回復薬を投げ渡す。
「それを飲んだら急いでシュライゼムの街に向かって走って下さい。他の皆もこちらに向かっている筈です」
「ル、ルートヴィヒはどうするんだ?」
「僕はこの三人の相手をしてクルトが逃げる間の時間を稼ぎます」
剣を構え、並々ならぬオーラを放つ三人に視線を向ける。
「ル、ルートヴィヒ、無茶だ。相手は全員が十二星王だぞ!?」
「その無茶を自分の母親を逃がす為にクルトは行ったのでしょう? クルト、あなたはテルナー皇子に対抗できる唯一無事な王位継承者です。後々の為にもあなたは必ず生き残らなければいけません。だからここは任せて街に向かって下さい。城の門番は眠らせておきました」
クルトは眉間に皺を寄せ数秒思案する。
「···すまない!! ここは任せた!!」
クルトは僕に頭を下げて城から出ようと走り出した。
「おいおい、行かせると思ってるのか?」
バルバドスの放つ蒼炎がクルトに向かうが、僕はそれを斬り裂く。
「攻撃させると思っていたんですか?」
「思っているよ」
藤色髪のおさげの少年――闘王ヤン·ジェウが瞬歩に似た動きで僕を抜いてクルトを追いかけようとするけど瞬歩で駆けて剣を振りそれを防ぐ。
「抜かせません!!」
「おっと、君も縮地が使えるのか」
闘王の動きも阻害し、クルトを逃がせると思ったけど、地王ガイツァーが地面に手を当て叫ぶ。
「捕まえろ、金剛手!!」
ダイヤモンドでできた大きな手が地面から生えてクルトを捕まえようとしている。
「させるものかっ!!」
僕は光迅流二ノ型激迅応用技――激光迅をダイヤモンドの手に放ち粉砕する。
くっ、あまりの硬さに手が痺れる。
だがこれでクルトを逃がせた。
改めて炎王、闘王、地王の三人に向けて剣を構える。
「僕を倒さぬ限りクルトは追えませんよ!!」
僕はクルトをボロボロにされた怒りを込めて叫ぶ。
「おいおい、なんでそんなに怒ってるんだ?」
炎王の問いに更に怒りが込み上がる。
「あなた達ならば一瞬でクルトを殺せた筈。なのに弄ぶ様に傷がつけられていた。友が弄ばれて怒らない者などいると思いますかっ!!」
「ふははっ、俺が一瞬で殺さなかったおかげでお前はクルト皇子を助けるのに間に合ったんだろ? 怒るよりも感謝しろよ」
炎王の笑い声には腹が立つが、炎王がクルトを傷つける事を楽しんだおかげで間に合ったのも事実。
それでも怒りの感情は更に湧く。
「僕はあなた達を決して許しはしない!!」
「許さないで結構。ボクは強い奴と闘いたかったんだ!! 君はボクを楽しませてくれるかな?」
闘王が縮地という瞬歩に似た技で僕に近付き掌底を僕の胸目掛けて放つ。
それを剣でいなしつつ距離をとろうとするが、闘王の連撃が止まらない。
「烈華拳法――発勁!!」
いつの間にか壁際まで追い詰められていた。
闘王の掌底をなんとか躱すが、躱した掌底は壁を陥没させ大きな亀裂を走らせる。
一撃でもまともに喰らえばただでは済まない威力だ。
闘王から距離をとったが、次は炎王の蛇の形をした蒼炎が僕を襲う。
「喰らい焼き尽くせ、蒼炎蛇!!」
斬っても斬っても蒼き炎の蛇は次々と生まれる。
攻撃は更に増える。
「刺し穿け、金剛槍!!」
ガイツァーが地面から生み出したダイヤモンドの槍も僕に向けられる。
剣で金剛槍をいなしつつ、蒼い炎の蛇を斬り払う。
「へぇ〜、迅王の名は伊達じゃないね。その速さ痺れるよ。ボク一人で闘えないのは残念だ」
闘王は残念そうな表情をしながら襲いかかってくる。
蒼い炎蛇やダイヤモンドの槍も放たれる中、闘王の流れる様な連撃を躱すのは困難。
困難な筈なのに、今の僕は負ける気がしない。
いや、そもそも勝つ必要がない勝負だ。
三人の十二星王と戦う事十分程でその時はやってきた。
僕が壊した城の入口から赤き熱線が入ってきて炎王に向かう。
それを炎王は蒼い炎で防ぐ。
「ちっ、来やがったか!!」
城の入口から外を見ると、遠くの方で杖を構えているイルティミナ先生の姿と、こちらに向かって走ってくるヨルファングさんの姿が。
「避けろよ、ルートヴィヒ!!」
そう言いながら拳に赤き魔力を纏わせたヨルファングさんは、その拳を炎王、闘王、地王に向かって振り抜く。
ヨルファングさんによって放たれた赤き拳圧は地面を削りながら敵十二星王三人に向かう。
「くっ。防げ、金剛壁!!」
ダイヤモンドの壁が敵十二星王三人の前に生み出され赤き拳圧を防がんとするが、赤き拳圧がぶつかるとダイヤモンドの壁は破砕した。
だいぶ威力は弱まったが、赤い拳圧は未だ健在。
その赤き拳圧に闘王が掌底を放つ。
赤き拳圧と闘王の掌底がぶつかった瞬間、大きな衝撃音が鳴り、大気が震えた。
「ふぅ〜、流石は修羅王。一撃でこの威力とは」
闘王は嬉しそうにヨルファングさんを見つめる。
「ルートヴィヒ、ここは引くぞ」
だがヨルファングさんの言葉で残念そうな表情に変わる闘王。
「えぇ〜!? 闘おうよ修羅王!! ボクは君と闘いたかったんだ!!」
「ガキの遊びに付き合っている暇なんかねぇんだよ。ここが引き時だ、ルートヴィヒ」
ヨルファングさんの言葉に頷き、城から出ようとすると、闘王が追いかけてくるが、再びイルティミナ先生が赤き熱線を放って僕が逃げる隙を作ってくれた。
地面に向かって放たれた熱線は爆煙を上げ、僕は城から脱出する事が出来た。
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