第十五話 メタルライノックス


 A級ダンジョンの十階層のボスモンスターを倒し、僕らは先へと進む。


 二十階層と三十階層のボスモンスターも中々手強かったけど、ナギさんを司令塔にした陣形で倒す事が出来た。


 お目当てのA級ダンジョンコアをステラが吸収すると、ナギさんが驚いていた。


 ステラによると新たな能力が解放されたらしい。


 なんでも、管理下に置いたダンジョン内で死んでも瞬時に生きかえれるようになったらしい。


 これはステラだけにしか適用されないらしいけど、管理下にあるダンジョン内では、ステラは無敵と言っても過言ではなさそうだ。


 理屈は分からないけど、凄まじい能力なのは間違いない。


 ちなみにダンジョンの名前はミネラダンジョンと名付けたみたいだ。


 ダンジョンコアは手に入れる事が出来たので、ステラの力で、ミネラダンジョンの一階へと転移した。


 ナギさんは初めての転移なので驚きを隠せないみたいだ。

 僕は何度も転移しているので慣れたものだ。


 もうフランツェル王国には用がないので、お隣のイルシュミット共和国に向かって魔導自動車を走らせる。



 東へと進むこと三日でイルシュミット共和国首都レベツァに到着した。


 この首都レベツァは通称冒険者の都と呼ばれているらしい。


 その理由は、D級ダンジョンとF級ダンジョンがレベツァ首都内にあって、多くの冒険者達が集まるから。


 だからイルシュミット共和国は、冒険者を始める国としてうってつけだと言われているみたいだ。


 まずはF級ダンジョンに向かう。


 十階層のダンジョンで、モンスターも弱くて罠もなく、ダンジョン内も単純な造りだったのであっと言う間にダンジョンコアを手に入れる事が出来た。今回は新たな能力の解放はなく、ダンジョン作成の回数が増えただけみたいだ。


 ダンジョンの名称はレベツァFダンジョンと名付けて、他の冒険者もダンジョンに潜っているので、転移は使わずにダンジョンから出ると、空がオレンジ色に染まっていた。


 時間も時間なので、今日はD級ダンジョンに潜るのを止めて、手頃な値段の食事処で夕食を摂る事にした。


 食事中、ナギさんが僕の剣を凝視しているのに気付く。


 「ナギさん、僕の剣が何か?」


 「いえ、何でもないんです。ただ、戦闘中にその黄金の剣の切れ味がとても素晴らしかったので見惚れていました」


 「そうなんですね。この剣はヨルバウム帝国のS級ダンジョンで手に入れたんです。黄金のドラゴンを倒して手に入れた剣なのですが、確かに切れ味がとても良いですね」


 「ドロップアイテムなのですか。う〜ん、この先S級ダンジョンに潜るみたいですけど、そのレベルの剣を手に入れる事ができるでしょうか?」


 「どうでしょう。こればかりは運ですからね。でも、ナギさんが使っている刀も中々の切れ味ですよね」


 「気付きましたか! ええ、実は故郷に帰った際にとある名匠に打ってもらった刀なのですが、流石は名匠の作品だけあって切れ味も良く、私に使いやすい様に作られているのでとても気に入っているんです。···その分、財布はかなり軽くなりましたが」


 ナギさんは苦笑いしながら椅子に立て掛けている刀に視線を向けている。


 その後もお互いの武器の素晴らしさを語りながら食事を摂った。



 翌日、D級ダンジョンに向かおうと宿屋から出ると、何やら騒がしい。


 騒いでいるのは冒険者の格好をした人間ばかりだ。


 不思議に思ったので、近くの冒険者に話を聴くと、ここから歩いて一時間程の距離にある森にメタルライノックスというSランクモンスターが現れたらしい。


 メタルライノックスは、尋常じゃない硬さの皮膚をしており、その硬さからメタルの名が付けられているが、鋼以上の硬さと言われる分厚い皮膚は、武器や防具にすると一級品になる。


 なので高ランク冒険者達はこぞって狙うモンスターなのだが、ここにもその一人が。


 「メ、メタルライノックス!? メタルライノックスの皮膚が手に入れば···。皆さん、先にメタルライノックスを倒しに行きませんか?」


 ナギさんがメタルライノックスと聞いて興奮している。


 ステラやセシル、パラケルトさんもメタルライノックスの皮膚には興味があるらしく、メタルライノックスを討伐しに行く事になった。


 まぁ、メタルライノックスの皮膚が手に入れば一級品の武器や防具を作る事が出来るのだから僕も賛成だ。  


 でも他の冒険者達もメタルライノックスを狙っているらしく、争奪戦になりそうだ。


 魔導自動車へと乗り込み、メタルライノックスが居る森へと向かう。


 森に到着すると、既にメタルライノックスと戦っている冒険者パーティーが複数居たけど、どのパーティーもメタルライノックスを討伐出来ず、ボロボロの状態だ。


 メタルライノックスはSランクのモンスターだ。


 他の冒険者パーティーは高く見てもBランク程度にしか見えない。


 いくら素材が欲しいとはいえ無謀としか言いようがない。


 光迅化してメタルライノックスに追われて逃げる冒険者達の間に入り、斬撃を放つ。


 確かに硬いけど、光迅化した状態で振るうクラウソラスは、メタルライノックスを深々と切り裂く。


 よし、勝てる!!


 雷迅化したセシルや、風魔法を刀にエンチャントしたナギさんも加わり、メタルライノックスを弱らせていく。


 最後はステラが放った火属性と光属性上級複合魔法クリムゾンレーザーにより脳を破壊されてその巨体を地へと沈めた。


 見事メタルライノックスを討伐出来た。


 その様子を見ていた他の冒険者は羨ましそうに僕らを見る。


 そんな視線などお構いなしで、ナギさんやパラケルトさんはメタルライノックスを嬉しそうに解体している。


 メタルライノックスを解体し終えた僕達は、鍛冶屋にメタルライノックスの皮を持ち込み、セシルの剣と皆の防具を作って貰うように依頼した。ナギさんも刀を打ってもらおうとしたのだけれど、刀を打てる鍛冶職人がレベツァには居なかったので、保留となった。ナギさんは少し残念そうにしていた。


 鍛冶屋に依頼した後、僕らはD級ダンジョンへと潜った。


 D級ダンジョンは二十階層あったけど、難なく最下層まで着いてボスモンスターを倒し、D級ダンジョンコアを手に入れた。


 ダンジョン名はレベツァDダンジョンと名付けてステラの管理下に置いたみたい。


 ここでもダンジョン作成回数が増えただけで、新たな能力は解放されなかったみたいだ。


 もう、イルシュミット共和国には用がないのだが、鍛冶屋に武器と防具を依頼しているので、二週間程イルシュミット共和国に滞在する事になった。

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