第十四話 魔眼の剣聖


 ホエセ村を襲った赤いドラゴンを倒して宴会をした翌日、僕達は弟子にしてくれと懇願してくるジョウや他の冒険者達から逃げる様にホエセ村を後にした。


 次の目的地は更に南下した先にあるフランツェル王国のA級ダンジョンだ。


 フランツェル王国のA級ダンジョンは王都にあるらしいので、魔導自動車をフランツェル王国王都ミネラに向けて走らせる。


 道中、時折現れるモンスターを倒しながら進む事一週間。


 フランツェル王国王都ミネラに着いた。やはり魔導自動車は速い。これが馬車ならもっと時間がかかってた。


 ミネラに足を踏み入れると、色彩豊かな建物と、美しい小川が街の中で流れている。


 なんでもミネラは美の都と呼ばれているらしい。確かに美しい街だ。


 街の造りに感動しながら僕達は冒険者ギルドへと向かう。

 A級ダンジョンの場所を聴く為だ。


 冒険者ギルドの中に入り、カウンターの受付嬢に話しかけようとしたけど、クエストが貼られている依頼ボード前に居る懐かしい顔を発見した。


 「もしかして、ナギさんですか?」


 「え? はい、そうですが···ルートヴィヒ殿ですか?」


 やはりナギさんで間違いないみたいだ。


 「お久しぶりです。ナギさん」


 「お久しぶりですね、ルートヴィヒ殿」


 僕達は互いに笑顔で握手を交わす。


 「ナギさんはどうしてここに?」


 ここから遠く離れた東の島国がナギさんの故郷だった筈。何故ここに居るのだろう?


 その疑問にナギさんは笑顔で答えてくれる。


 「一度故郷のミズホ国へと戻ったのですが、世界魔法学院大会で、世界の広さを知ったので、武者修行をしようと世界を行脚している最中なのです」


 「なるほど、そうなんですね」


 「ところでルートヴィヒ殿達は何故フランツェルに? ルートヴィヒ殿達の国は戦争が終わったばかりだと聴きましたが」


 「実は事情があって各地のダンジョンを攻略中なんです。フランツェルにもA級ダンジョンがあると聴いてやってきました」


 「そうなのですね。···ダンジョンですか。···。」


 ナギさんは何か言いにくそうにしている。


 「どうしたんですか、ナギさん?」


 「···その〜、もしよければ私もダンジョン攻略に参加させてもらえませんか?」


 ナギさんも一緒にダンジョン攻略か。ナギさんが一緒だと心強いけど、パーティーに入れたらステラの能力や、何故ダンジョンを攻略しているか説明しないといけない。


 これは独断では決められないので、ステラやセシル、パラケルトさんに視線を向けると、ステラやセシルは頷いてくれる。


 パラケルトさんはナギさんの事を知らないので紹介すると、「ステラ達がいいのなら私もいいのね。シジマ流免許皆伝の剣士とか頼りになりそうなのね」と言って快諾してくれた。


 「ナギさん、大丈夫そうなのでよろしくお願いします」


 「そうですか、よかった。こちらこそよろしくお願いします」


 ナギさんは安堵した表情で頭を下げる。


 A級ダンジョンの場所はナギさんが知っているみたいなので、案内してもらいながら、何故ダンジョン攻略をしているか説明する。


 「な、なるほど。ダンジョンマスターにダンジョンコア。それにステラ殿はユルゲイトという悪漢に作られた人間。···ふ〜む、世界にはまだまだ知らない事が沢山ある。それにこの魔導自動車は凄く速いですね。流石は十二星王パラケルト殿の作ったカラクリ」


 A級ダンジョンまでは少し距離があるらしいので、魔導自動車をパラケルトさんが出すと目を輝かせてナギさんは驚いた。


 乗っている今も、魔導自動車の速さに感動している。


 褒められて嬉しいのかパラケルトさんは嬉しそうに照れている。


 「わかりました。まだまだ不肖の身なれど、このナギ·ミヤモト、ステラ殿達の力になりましょう」


 ナギさんが仲間になった。剣術も素晴らしい腕前だけど、ナギさんの魔眼は強力だ。頼もしい仲間が出来た事をステラやセシルも喜んだ。


 パラケルトさんは、ナギさんが魔眼持ちだとわかると、「あとでじっくり見せてほしいの!!」と興奮してナギさんを苦笑いさせていた。



 A級ダンジョンに着き、門番に冒険者カードを見せる。

 その際にナギさんもAランク冒険者だという事がわかった。


 ダンジョンの中に入り、モンスターを倒しながら進む。


 このA級ダンジョンは三十階層あるらしい。それにA級という事もあり、中々モンスターも強く、罠もある。

 油断せずに進まないと。


 ナギさんが加わった事によりパーティーとして強くなった筈なんだけど、相変わらずパラケルトさんがバテるのが早く、僕が背負う事になって戦力が減っている。


 それでもモンスターをなぎ倒し、罠を回避しながら十階層へと着いた。


 体力が回復したパラケルトさんを降ろして、扉を開けると、広い部屋の中央に白銀の毛並みで筋肉質の大きな猿が待ち構えていた。


 ステラは「銀色のゴリラだ!!」だと言っている。ゴリラ?


 僕達に気付いた銀猿は物凄いスピードで移動してあっという間に僕達の目の前に現れた。


 疾いっ!!


 咄嗟に剣を振るうが避けられる。


 僕とセシルは出来るだけ光迅化と雷迅化を使わないように決めているので、武器にだけエンチャントして銀猿と戦う。


 だけど、銀猿の動きが機敏で中々攻撃が当たらない。ステラも魔法で攻撃するが、避けられる。


 当たったとしても銀色の毛が鋼の様に硬く、中々致命傷を与えられない。


パラケルトさんはイルティミナ先生と同じく手を出さない。


 苦戦している中、ナギさんの灰色の瞳に五芒星が浮かび上がり淡く光る。


 魔眼の解放だ。


 ナギさんが魔眼を解放した事に状況は一変した。


 ナギさんが数秒後の未来を魔眼で視て、僕達に指示を出してくれるのだ。


 これにより、銀猿に攻撃を当てることができて、あっという間に銀猿は瀕死状態に。


 銀猿は怒り、体毛を赤銀に変色させて襲いかかってくるけど、魔眼で予知したナギさんの一撃で光の粒子となって消えた。


 わかっていたけど、やはりナギさんは頼りになる。

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