第十一話 VS連合軍⑤
王都ナクルムでの戦いが終わり、僕達は王都ナクルムを占拠した。
多くの敵兵は撤退したが、捕虜にした敵兵士も居る。
ほとんどの敵兵士が紫色の薬をドーピングしており、皆好戦的で乱暴な発言が多く、話にならないので王都ナクルムの牢屋に入れている。
副作用は消えたと思ってたけど、そうでもないみたいだ。
司令官であるクルトは拘束したワナゼンダ国王から薬の事を聞いたらしく、新たにわかった事が二つあった。
一つは薬の名前はエボリュト。もう一つは薬の入手先は連合軍盟主国のオルファースト王国だという事。
戦後のナクルムの住民達は意外にも僕達ヨルバウム帝国軍の言う事に従順で、暴動などの騒ぎは起こっていない。
住民達はエボリュトを飲み乱暴になった兵士達に手を焼いていたらしい。
クルトはワナゼンダ国王都ナクルムに、指揮官の将軍と一万の兵士達を残す事にして、先を進む事にしたみたいだ。
ヨルバウム帝国軍東軍は王都ナクルムをあとにして、撤退した連合軍を追う事となった。
連合軍はワナゼンダ国を出てベストア王国に入国した。
ベストア王国に入る前に倒しておきたかったが、そう簡単にはいかないみたいだ。
ベストア王国は小国ながら要塞国家として名を轟かせている。
ベストア王国は周囲を岩山に囲まれている。その岩山を要塞化しているのだ。ワナゼンダ国とベストア王国の国境の間にも岩山があり、その岩山も当然要塞化している。
迂回したいところだが、遠回りになって時間がかかる。それにヨルバウム帝国としては、ベストア王国の国王も拘束して、ベストア王国も占拠しておきたい。
難攻不落とも言われるベストア王国の天然要塞。
だが、長年の難攻不落伝説は今日で終わりの日を迎えた。
イルティミナ、チェルシー、ステラによる最上級魔法の攻撃が炸裂した。
敵魔術士達は当然要塞に防御魔法を幾重にもかけていたが、その程度の防御魔法は、三人の魔法の前では無力だった。
あっさりと国境の要塞を無力化した。
要塞にはベストア王国の兵士達しかおらず、連合軍は先へと進んだみたいだ。
要塞内の経路は複雑だったけど、投降してきたベストア王国の兵士に案内させて無事に通過出来た。
ベストア王国に入国すると拍子抜けした。
またワナゼンダ国と同じ様にベストア王国の王都に立て籠もるのかと思ったが、ベストア王国の王都は簡単に占拠出来た。
ベストア王国国王も自ら投降し、身柄を確保した。
現在、ヨルバウム帝国軍東軍はベストア王国王都シャンデラで休息をとっている。
順調にミュルベルト王国に向けて進軍出来ている。
いや、出来すぎている。
敵の司令官は名軍師と呼ばれているラライド·セプシアンだ。
絶対に何かある。油断は出来ない。
ベストア王国王都シャンデラで英気を充分に養った後、ベストア王都には指揮官の将軍一名と五千の兵士達を置いて進軍を再開した。
ベストア王国の天然要塞を出ればミュルベルト王国の砦がある。
そこも今は連合軍に占拠されているらしいけど。
恐らくそこで連合軍は待ち構えている筈だ。
ミュルベルト王国との国境にあるベストア王国の天然要塞を通過しようと進軍している時に事は起きた。
天然要塞内はもぬけの殻で怪しかった。だが、ここを通らなければミュルベルト王国には行けない。
案の定罠があり、要塞内が爆発を始め、崩れ始めた。
このままでは生き埋めになる。
だが、こちらには大賢者イルティミナが居て、最上級魔法を使えるチェルシーとステラもいる。
三人は落ちてくる瓦礫に向かって闇属性最上級魔法ダークネススフィアを放ち瓦礫を吸収していった。
今まであった岩山要塞には大きな空洞が出来た。
要塞に大きな穴が空き、遠く離れたミュルベルト王国の砦で事の成り行きを見ていた連合軍が見える。
要塞を爆破して生き埋めにする作戦だったのか? こちらには大賢者が居るのだ。無力化されるとは考えなかったのか?
疑問に思いながらミュルベルト王国国境沿いの砦――デラン砦に向かって進軍しようと国境を跨いだ瞬間地面にものすごく巨大な魔法陣が浮かび上がる。
「これは魔法無力化陣!? やられたべさ!! 皆の者ここから早く退くべさ!!」
イルティミナ先生が珍しく慌てている。
砦から無数の砲弾がとんでくる。この距離で届くのかっ!?
味方魔術士達が杖をかざし防御魔法を張ろうとしているが、発動しない。
「無駄べさ!! 魔法無力化陣は、魔法陣のある空間に干渉して魔法を使えなくするべさ。早く撤退を」
イルティミナ先生が大声で叫ぶけど間に合わない。
敵の攻撃が着弾し、味方の兵士達は吹き飛んでいく。
土煙が立つ中、僕はステラを探す。魔法が使えなければステラはただの九歳の女の子だ。
「ステラ!! ステラ!! 返事をして!!」
大声で叫ぶけど、返事がない。
その間もデラン砦からの攻撃は続く。
やむなく光る魔法陣から出る為にベストア王国側へと避難する。
敵の攻撃が届かない位置まで避難すると、そこには怪我をした味方の兵士達が数え切れない程居た。
その中にステラが居ないか必死に探しているとすぐに見つかった。良かった、ステラは無事だ。
ステラに駆け寄るとステラは泣きながら誰かに回復魔法をかけている。
近づくと大量の血を流し意識がなくなっているアルゴ様が。
ステラは何度も回復魔法をかける。でも無駄だ。···もう死んでいる。
「ステラ、止めるんだ。父上はもう···」
ステラの隣に居るケルヴィ様がステラを止めようとする。
「あ、アルゴ様は私を庇って。それで怪我を。は、早く治さないと。なのに治らない! 何で? 何で? 何でよっ!?」
ステラは取り乱しながらもなおアルゴ様の遺体に回復魔法をかけようとする。
そのステラを抱きしめて回復魔法をかけるのを止めさせる。
「ステラ、ステラ!! もう止めるんだ! アルゴ様はもう亡くなっている。 だから」
僕の声で振り返り、泣きながら僕の胸に顔を埋める。
「ルートヴィヒ! アルゴ様が、アルゴ様がぁ!!」
嗚咽を漏らすステラを抱きしめていると後ろから足音が。
「お、お祖父様? な、何で?」
振り返ると、アルゴ様の遺体を見て呆然と立ち尽くすセシルが居た。
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