第二五話 Bランク冒険者


 学校が休みの日曜日に魔法学院を出て、王都シュライゼムの冒険者ギルドへと入り、受付嬢へと話しかける。


「早くBランクの冒険者になりたいんだけど、どうすればいいかしら?」


 「神童兄妹の妹さん!? ···Bランク冒険者ですか? ええと、ステラさんは今Fランク冒険者なので···ちょっと待ってください。ゴブリン三十体とスライム二十体、ホーンラビット二十体を倒していますね。 ···それにBランクモンスターのワイバーン討伐依頼でワイバーン十体を討伐!? しかもそのうち一体はAランク相当の上位個体!? 本当に倒したのですか!?」


 「ええ、ゴブリン三十体とスライムニ十体、ホーンラビット二十体は兄のルートヴィヒと幼馴染のセシルの三人で討伐して、ワイバーン討伐はパーティーを組んで討伐したのだけど、その内五体は私が魔法で倒したわ」


 「···少々お待ち下さい。上の者を呼んできます」


 受付嬢は二階へと上がっていく。 


 数分後、ガタイの良いおっちゃんを引き連れて戻って来た。


 「おう、噂の神童兄妹の妹か。俺はここのギルドマスターのレドルフだ。で? お前さんがワイバーン五体を倒したって?」


 「ええ。でも今なら一人で十体全部倒す自信があるわ!」


 ギルドマスターのレドルフは苦笑いしながら鼻を掻く。


 「···世界魔法学院大会で活躍したのは聞いてる。ワイバーンを討伐したのも冒険者記録にしっかりと残っている。で、お前さんはBランク冒険者になりたいんだったか?」


 「ええ、近くのB級ダンジョンに潜りたいの」


 「お前さんは今Fランクだ。だがランクを上げる為のモンスター討伐数はCランクまでは足りている。あとは、普通ランクを上げる為には、各ランクに応じた依頼を十件ずつこなさなきゃいけないんだが、ステラ嬢ちゃんはAランク相当のワイバーン討伐依頼をパーティーでとはいえ達成している。だから各ランクの依頼を一件ずつこなせばCランクまでは上げてやる。Cランクになったらもう一度俺に声をかけろ。Bランク昇級試験の説明をしてやる」


 「わかったわ」


 話を終えたギルドマスターが二階へと戻っていったので、早速Fランクの依頼を受付嬢に紹介してもらった。


 紹介されたFランクの依頼は迷子犬の捜索だった。


 なんだ犬を探すだけかと拍子抜けしたけど甘かった。


 王都シュライゼムは広い。朝から夕方まで探し回ってようやく迷子になっていた犬を見つけ飼い主に引き渡した。


 冒険者ギルドへと報告し、Eランク冒険者になったので、Eランクの依頼を紹介してもらい、その日は寮に戻った。


 翌日、授業が終わり、放課後。


 今私は魔道具屋に来ている。


 Eランクの依頼は薬草をニ十個採取なのだが、リュックサックに入れるとかさばるし、これからの依頼を考えると八歳の体では素材を持ちきれないので、魔道具屋で冒険者パーティー刹那の剣のリーダーリタが持っていた様なアイテム袋を探しているのだが、高い。


 まぁ、ワイバーンを討伐した時の報酬で小金持ちなので買えるのだけど。


 魔道具屋の店員に聞いてワイバーンが十体ぐらい入るアイテム袋を見繕って貰った。


 おかげで私の財布はだいぶ軽くなった。くすん。


 アイテム袋を手に入れたのでシュライゼムから出て、近くの森で薬草を探す。


 魔法薬学の授業で薬草は嫌という程扱っているので、見ただけでどれが薬草か簡単にわかった。


 採取している間、スライムやホーンラビットが現れたけど、私の敵じゃない。風魔法で倒し、討伐証明と素材もアイテム袋に入れておく。


 シュライゼムに戻り、薬草ニ十個とモンスターの討伐証明と素材を冒険者ギルドに納めてDランク冒険者になった。



 次の日も依頼を受けてゴブリンニ十体を討伐してCランクにあっという間に上がった。


 Cランクの依頼はブラックウルフをニ十体討伐する事だったので、森の奥まで行き、あっという間に討伐。


 これでBランク試験を受ける資格を得た。


 冒険者ギルドに行ってレドルフのおっちゃんを呼び出した。


 「まさかもう依頼を達成するなんて。実力は本当だったんだな」


 疑ってたらしい。まぁ、見た目八歳のか弱い美少女だから仕方ない。


 「で? B級昇格試験って何をすればいいの?」


 「俺と戦ってもらう。俺が実力を認めたらB級だ」


 「なんだそれだけ? 勝てばいいの?」


 私の言葉でギルドに居た冒険者達がざわつく。


 「おいおい、俺はこう見えても昔はSランク冒険者だったんだ。引退してからも鍛錬はかかしてねぇ。勝つのは難しいと思うぜ?」


 「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあ勝ったら凄いのね?」


 私はニヤリと笑う。目立つチャンスだ。


 「まぁ、思うのは自由だ。ついて来い」


 レドルフのおっちゃんについて行き、冒険者ギルドの地下に行くと、広い修練場があった。


 「さぁ、始めるとするか。いつでもいいぞかかってこい」


 レドルフのおっちゃんは棍棒みたいな太い木刀を手にして構えている。


 レドルフのおっちゃん強いみたいだし加減しなくてもいいよね。


 杖に魔力を溜め、無詠唱でライトニングを放つ。


 レドルフのおっちゃんは一瞬驚いた顔をしたけど、見事に避けて私に向かってくる。速い!!


 即座にガイアウォールを無詠唱で展開して防御するがガイアウォールに大きな亀裂が。なんて威力の剣撃だ。


 私は自分に防御魔法を重ねがけして全力全開の魔法を放つ。


 「ビックバン!!」


 修練場は光に包まれ大きな爆発が起きる。レドルフのおっちゃんは風属性の防御魔法を自分にかけて後方へと下がるけど、ビックバンの衝撃に耐えきれず風属性防御魔法は破れ、壁へと激突した。


 光が止むと、修練場は見るも無惨な姿になっていた。


 周囲の壁には大きな亀裂が入り、地面には大きなクレーターが出来ている。


 大きな爆発音を聞きつけて、受付嬢や冒険者達がやって来て、修練場の有様を見て唖然としている。


 レドルフのおっちゃんはあの爆発でも大きな怪我はなく、意識を保てている。服はボロボロだけど。流石はS級か。


 そんなレドルフのおっちゃんはふらつきながら私に近付いて拳骨をする。痛っ!!


 私は頭を抑えながらレドルフのおっちゃんを睨む。


 「なんで殴るのよ」


 「お前はバカか!! この広さの修練場で使っていい魔法じゃないだろあれは!! 冒険者ギルドを壊す気か!?」


 ああ、やはりやり過ぎたか。でも壊れてないし。レドルフのおっちゃんもピンピンしてるし、大丈夫だよね? ···一応謝っておくか。


 「ごめんちゃい」


 舌をペロリと出してお茶目に謝る私。


 そんな私を見てレドルフのおっちゃんは大きく溜息を吐いた。


 「はぁ〜。わかった。もういい。合格だ。こんな危険な奴を昇級させるのは気が引けるがしょうがない。お前さんは今日からBランク冒険者だ」


 呆れ顔で私を見つめるレドルフのおっちゃん。いや、レドルフのおっちゃんだけでなく、受付嬢や冒険者達も呆れ顔をしている。何で?


 まぁ、そんなこんなで私は目標にしていたBランク冒険者になった。

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