第十八話 タッグ戦


 大会五日目。


 タッグ戦の始まりだ。


 タッグ戦には三十六組のペアが出場する。


 タッグ戦のトーナメント表が発表された。


 私達は第八試合で相手はウルスラ連合国の三年生サーシャ·ベルネスカ選手と同じく三年生のターニャ·アルフォンソ選手ペア。


 個人戦ではあまり印象に残っていないけど油断は禁物。


 注目しているペアは、マドランガ共和国のラダン&イレーヌペア、ヤーバル王国チェルシー&マリアペア、ミズホ国ナギ&ミスズペアだ。


 やはりチェルシーやナギ選手は強敵だし、ラダン&イレーヌも油断できない相手だ。


 まあ、まずは目の前の試合に勝たなければいけない。集中しよう。


 一回戦が始まり、順調に試合は進み、私達の番がやってきた。


 「さぁ行こうかステラ」


 「うん」


 私達は控室から舞台へと進む。


 『さぁ、第八試合は優勝候補の登場だ。 ヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院一年生ルートヴィヒ選手と同じく一年生ステラ選手の兄妹ペア〜!! 対するはウルスラ連合国魔法学院三年生サーシャ·ベルネスカ選手とターニャ·アルフォンソのペアだ。ルートヴィヒ選手は個人戦優勝選手で、ステラ選手も個人戦ベスト八に入った強者です。一方のサーシャ&ターニャペアは毎回タッグ戦ベスト八以上に入っているタッグ戦の名門ウルスラ連合国魔法学院の選手です。ルートヴィヒ選手&ステラ選手と言えども油断の出来ない相手です』


 サーシャ選手、ターニャ選手と握手をする。


 「あなた達と戦える事を誇りに思うわ」


 「胸を借りるつもりで戦わせてもらうわね」


 サーシャ選手もターニャ選手も良い人だ。


 この試合楽しめそう。


 向かい合うと審判が試合開始の合図を出す。


開幕速攻でサーシャ選手とターニャ選手は手を合わせ短縮魔法を発動する。


 「水属性、風属性上級ユニゾン魔法ブリザードサイクロン!!」


 ユニゾン魔法か。魔法の授業で習った。


 確か複合魔法が個人で行う魔法に対して、ユニゾン魔法は複数人で行う複合魔法みたいなものだ。


 だが、複合魔法とユニゾン魔法は似ているようで違う。




 ユニゾン魔法は他人の魔力と波長を合わせなければならず複合魔法よりも難易度が高い。その分威力は複合魔法よりもかなり高い。


 私は上級複合魔法フレアサイクロンをブリザードサイクロンに向けて放つけど、押されている。


 だが私がブリザードサイクロンを抑えているうちに、ルートヴィヒが瞬歩で二人に近付く。


 「光迅流四ノ型光雨!!」


 「ウォータートルネードシールド」


 斬撃の雨がサーシャ選手とターニャ選手を襲うが、水属性、風属性短縮上級ユニゾン防御魔法で防ぐ。


 ルートヴィヒは一旦距離をとり、セイクリッドレイを剣と身体にエンチャントする。


 一方の私はブリザードサイクロンをなんとか打ち消し、無詠唱で火属性、土属性上級複合魔法ガイアバーストを放ち、サーシャ選手とターニャ選手の目をこちらに向けさせる。


 サーシャ選手達は再びウォータートルネードシールドを張り、岩の散弾を防ぐ。


 だが光の如き速さでサーシャ選手達の背後に回ったルートヴィヒが終わりの一撃を放つ。


 「光迅流ニノ型激迅、応用技激光迅!!」


 「「きゃあああ!!」」


 ウォータートルネードシールドは砕け散りサーシャ選手達はその場に崩れる。


 審判がサーシャ選手達の戦闘不能を確認し、試合は終了となった。


 『試合終了〜!! 勝者ルートヴィヒ&ステラ選手〜!! やはりルートヴィヒ選手とステラ選手は強かったですが、サーシャ選手とターニャ選手も健闘しましたよね、フェイさん』


 『はい、素晴らしいユニゾン魔法でした。さすがタッグ戦の名門のお二人です。綺麗な波長で合わさったユニゾン魔法に痺れました』


 サーシャ選手達は確かに強かった。これは個人戦の結果で考えていたら足元をすくわれるかもしれない。


 気を引き締めよう。



 一回戦が終わり二回戦が始まる。


 『二回戦第四試合はヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院ルートヴィヒ&ステラ選手対烈華民国魔法学院二年生ファン·ユージオ選手&同じく二年生リン·マオシェン選手の対決です。ファン選手、リン選手共に槍使い。息の合ったコンビネーションが持ち味のペアです。その見事な槍さばきがどこまでルートヴィヒ選手&ステラ選手を追い詰めるのか見物ですね』


 アナウンサーのミラさんの解説で不機嫌そうな顔をしているリン選手。ファン選手は私達と握手してくれたが、リン選手は拒否。


 「どこまで追い詰めるのかですって? 失礼しちゃうわ。まるで私達の敗北が決定しているみたいじゃない!!」


 怒りながら所定の位置に向かう。そんなリン選手をファン選手が宥めている。


 向かい合い、審判が試合開始の合図を出すのを構えて待つ。


 私達とファン選手達を見て審判が合図を出した瞬間、ファン選手が火属性中級魔法フレイムランスを槍にエンチャントし、リン選手が風属性中級魔法トルネードランスを槍にエンチャントして、物凄いスピードで私達に向かって来る。


 ルートヴィヒはエンチャント出来ないままファン選手達と対峙することになった。


 ファン選手とリン選手の華麗な槍さばきに苦戦するルートヴィヒ。息の合ったコンビネーション攻撃に反撃の隙を見い出せないルートヴィヒ。


 ファン選手達に攻撃魔法を放ちたいが、ルートヴィヒが近くに居るので放つ事が出来ない。


 これを狙ってルートヴィヒとの接近戦へと持ち込んだのだろう。


 だが甘い。攻撃魔法が使えないなら支援魔法に切り替えればいいだけ。


 私は無詠唱で聖属性上級魔法セイクリッドミラージュを放った。


 舞台に光の粒子が舞い、ルートヴィヒが分裂する。


 更にルートヴィヒに無詠唱でセイクリッドレイのエンチャントをかける。


 こうなってしまったらルートヴィヒの独壇場である。


 さっきまでルートヴィヒを苦戦させていた二人だが、今はルートヴィヒに翻弄されている。


 「光迅流一ノ型疾風、応用技六疾風!!」


 六つの斬撃がリン選手を捉え気絶させる。


 そのままファン選手へと身体を向け、光の一撃を放つ。


 「光迅流六ノ型瞬光!!」


 ファン選手は吹き飛び倒れる。


 二人とも戦闘不能とみなされ試合は終了した。


 『やはり勝ったのはルートヴィヒ選手&ステラ選手だ〜!! ルートヴィヒ選手を苦戦させたファン選手達の連携は見事でしたが、ステラ選手の支援により見事勝利してみせました』


 私達はファン選手達に近付き、手を差し出す。


 すると今度はリン選手も握手してくれた。


 「悔しいけど私達の負けよ。私達を倒したんだから絶対優勝しなさいよね!!」


 リン選手は不機嫌そうな表情をしながら早足で舞台から去っていく。


 「俺もマオと同じ気持ちだ。君達の優勝を願っている」


 私達にそう言うとファン選手はリン選手を追いかける。


 ツンデレを相方に持つと大変だなぁとファン選手に同情しながら私達も舞台から去った。


 一回戦でも思ったけど、個人戦とは全然違う。


 こりゃあ、三回戦も厳しくなるかも?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る