第十三話 雷迅VS魔眼の剣聖


 ソフラ先生、ウリス生徒会長、クルト皇子、ルートヴィヒと共に意識を失ったバズ選手が居る医務室に向かうとセシルの姿があった。


「セシル、バズ選手の様子は?」


 「身体の傷は完治したらしいけど目を覚まさないみたいだ」


 やはりフィリップと同じ薬を飲んだのだろうか?


 この事を大会委員に伝えておく。他にも薬を使用している選手が居ないか調査してくれる事になった。


 その後のCブロック一回戦は順調に進んでいくが、第十一試合の出場選手を見てルートヴィヒの表情が変わる。


 『Cブロック一回戦第十一試合は、ミズホ国魔法学院二年生ナギ·ミヤモト選手対バイツァール王国魔法学院三年生アレックス·ヴァイパー選手の対決です。


 ミズホ国と言えば剣術で有名ですが、なんとナギ選手は剣術の四大流派の一つシジマ流の免許皆伝者です。対するアレックス選手はトリプルの魔術士。この試合はいかに相手を自分の攻撃領域に誘い込めれるかが鍵になりそうですね』


 両者所定の位置で構えをとる。


 審判が試合開始の合図を出すと、アレックス選手はナギ選手から距離をとる。


 対するナギ選手は片刃の変わった形の剣に風魔法をエンチャントしたあと動かない。


 アレックス選手は遠距離から短縮詠唱で水属性上級範囲魔法アイシクルレインを放つ。 


 無数の氷弾がナギ選手に向かうが、全て見えない壁に弾き返される様に当たらない。


 「どうなってるのあれ?」


 「可視出来ない程の速度で魔法を斬っているんだよ」


 私の疑問に答えてくれるルートヴィヒ。


 私にはナギ選手は剣を握った構えのまま動いていないように見える。


 アレックス選手は様々な魔法をナギ選手に放つが全て当たらない。


 苛立ちを覚えたのか杖に大量の魔力を込め始めた。


 大技が来ると思った時、ナギ選手が消えた。


 気が付くとアレックス選手の目の前に! あの動きはルートヴィヒの瞬歩に似ている。


 アレックス選手の首元に剣を突きつけるナギ選手。


 「降参だ」


 アレックス選手が自身の敗北を認めこの戦いは終了した。


 ナギ選手はアレックス選手、審判に礼をする。


 そんなナギ選手をルートヴィヒが真剣な表情で見つめる。


 「彼女も大会出場者でしたか」


 ナギ選手を見つめながら呟くルートヴィヒ。


 え? もしかして知り合いかな? 私知らないんだけどどういう関係?


 ルートヴィヒとナギ選手の関係が気になりながらも試合観戦を続ける。


 その後のCブロックはライトニングを纏ったセシルが無双して決勝まで今大会最速で駆け上がる。


 Cブロック決勝戦の対戦者は、戦った相手全員に敗北宣言をさせたナギ·ミヤモト選手。


 『さぁ、まもなく始まるCブロック決勝戦の選手を紹介します。まずはヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院一年生セシル·フェブレン選手。今大会最速でブロック戦決勝まで勝ち上がった男。ついた異名は『雷迅』。今回も雷の如き速さで勝利するのか!? 一方対するはすべての試合相手に敗北を認めさせている剣士、ミズホ国魔法学院二年生ナギ·ミヤモト選手。彼女の動きも負けず劣らず速いですが、フェイさんはこの試合どちらが勝つと思いますか?」


 「剣は専門外なので正直分からないです。ですが、ナギ選手はまだ本気を見せていない感じがしますね。なので一応ナギ選手が勝つと予想しておきます」


 『なるほど。ちなみに私はセシル選手勝つと予想します。理由は美少年だから!!」


 相変わらず適当なアナウンサーに観客が呆れている中、セシルとナギ選手が向かい合う。


 「光迅流初伝セシル·フェブレン。参る!!」


 「シジマ流免許皆伝ナギ·ミヤモト。参ります」


 お互いに名乗りを上げ戦闘態勢に入る。


 審判が試合開始の合図を出し、セシルは身体と剣にライトニングを付与し、ナギ選手は剣に風属性中級魔法トルネードブレードを付与する。


 雷迅化したセシルの姿が消え、ナギ選手の後方へと現れた。


 そのままセシルの剣がナギ選手に向かうが、振り向かないまま剣で背後からの剣撃を防ぐナギ選手。


 防がれたが、セシルは攻撃の手を緩めない。セシルの姿が消えては現れを繰り返し、あられる度にナギ選手に剣撃を放つが全て防がれる。


 だが今の所は紫電を纏ったセシルが押してるように見える。


 たが見ているルートヴィヒの表情は険しい。


 防戦一方に見えるナギ選手はセシルの攻撃を弾き返しながら呟く。


 「攻撃できる隙が無いです。···このままじゃ埒が明かないですね。仕方ありません。魔眼開放」


 そう呟いた瞬間、ナギ選手の灰色の瞳に五芒星が浮かび淡く光る。


 ナギ選手は剣を鞘に戻し、構えた。


 セシルはナギ選手の左斜め後方に現れ技を放つ。


 「光迅流ニノ型激迅、応用技激雷迅!!」


 「シジマ流雷切!!」


 セシルとナギ選手が交差する。


 セシルの身体が傾き倒れる。


 審判がセシルの戦闘不能を確認し、試合終了の合図を出した。


 『試合終了〜!! 勝ったのはナギ·ミヤモト選手〜!! はっきり言って速すぎて何がどうなってナギ選手が勝ったかわかりません。フェイさんは何か分かった事はありますか?』


 『ほとんどわかりませんでしたが、一つだけ分かった事があります。彼女が魔眼持ちだということが』


 『魔眼持ち?』


 『はい。生まれつき瞳に異能を持った方達の総称です。様々な能力が確認されていますが、確認されている魔眼はどれも強力な能力を持っています。ナギ選手は魔眼の力を使って勝利したのでしょう』


 『なるほど。魔眼ですか。じゃあ今日から彼女の異名は『魔眼の剣聖』ですね!! と言う訳でCブロック代表は『魔眼の剣聖』ナギ·ミヤモト選手に決定しました!!』


 試合が終わり、拍手喝采の中セシルとナギ選手が握手をして互いの健闘を讃えあっている。


 これでCブロック代表が決まり、大会二日目が幕を閉じた。

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