第十話 チェルシー·モルフェイド


 ついに世界魔法学院大会の開催日がやってきたわ。


 大会に向けて訓練は積んできたし、準備万端。


 ソフラ先生に引率されながら闘技場へと向かう。


 闘技場の周りは人だらけ。


 屋台も沢山並んでいる。凄く賑やか。


 まずは開会式があるらしい。


 世界魔法学院大会の参加国は全部で二十ヶ国。各国の代表は五名だから個人戦は全員で百名の参加となる。タッグ戦は今年は三十六組の参加みたい。


 個人戦四日間とタッグ戦三日間の計七日間開かれる。 


 闘技場の舞台へと上がり、ヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院と書かれたプレートを持つ人の前に並ぶ。


 開会式が始まった。


 お偉いさんの長ったらしいスピーチが進み、ガラルホルンオウデン魔法学院の三年生が選手宣誓をして開会式は終わった。


 この後はトーナメント表の発表だ。


 A、B、C、Dの四ブロックに分けられて戦うらしい。


 私はAブロック、クルト皇子とウリス生徒会長はBブロック、セシルはCブロック、ルートヴィヒはDブロックで戦う事になった。


 Aブロックから順に試合が始まるらしい。


 ということでまずは私の試合から。


 Aブロック一回戦第三試合が私の出番だ。


 第一試合と第二試合はスムーズに終わり、すぐに私の出番がやって来た。


 大勢の観客の中には各国の偉い方も居るらしいし、流石に緊張してきた。


 舞台に上がると凄い歓声が。う〜、緊張して体が震えてきた。


 そんな私を見て、向かい合っている試合相手は笑う。


 「おいおい、世界大会の場に不相応な奴が居るなぁ。おチビちゃん、帰ってママのおっぱいでもしゃぶってたらどうだ?」


 相手は東大陸にあるマルト王国魔法学院の三年生。


 身長が二メートルぐらいあるんですけど、本当に十五歳?


それにバカでかい斧を担いでる。本当に魔法使い?


 相手は黙って見ているのをビビったと思ったらしく、ゲラゲラと笑う。


 「こりゃあ一回戦は楽勝だな。ラッキーだったぜ」


 試合はまだ始まっていないというのに幸せな奴だわ。


 なお試合はアナウンサーと解説者が居るみたいで、私達の試合も解説している。


 『Aブロック一回戦第三試合はマルト王国魔法学院三年生グルバン選手とヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院一年生のステラ選手の戦いですが、あまりにも体格差がありますねぇ。四年前の世界魔法学院大会で優勝して現在はガラルホルンの国家魔導師になっている解説者のフェイ·ブライトネスさんはどう見ますか?」


 『魔法に体格は関係ないですからね。七歳という年齢で代表選手に選ばれたステラ選手は気になりますね』


 おお、解説者はわかってるねぇ。


 注目浴びたいし、ちょっとド派手にいきますか!!


 審判が試合開始の合図を出した瞬間、無詠唱でフレアサイクロンを放つ。


 余裕そうにしていたグルバンは何が起きたか分からない表情をしたままフレアサイクロンに飲み込まれた。


 死なない程度には威力を抑えたので無事ではあるけど、ボロボロになって倒れているグルバン。


 すぐに審判が試合終了の合図を出し、私が勝者となった。


 『試合終了!? ステラ選手の勝利!? 僅か数秒の出来事でしたが、今の魔法は?』


 『今の魔法は風と火の上級複合魔法ですね。しかも無詠唱です。七歳という年齢で使えるなんて正直驚きました』 


 『なんと!? 七歳という年齢で上級複合魔法を無詠唱で放つ逸材が現れたぁ!! これは次の試合も要チェックですね!』


 アナウンサーと解説者の解説で観客から大きな歓声があがる。


 気持ちいい!! 皆が私に注目している。いいぞいいぞ。次の試合もド派手にいきますか!!


 こうして私は初戦を華々しい勝利で飾った。 


 Aブロック一回戦も残り一試合。皆代表にあがるだけあって強い。でも正直今の所私より強い選手は現れていない。Aブロック代表の座はもらったかなと考えていると現れた。規格外の奴が。


 『さぁ、Aブロック一回戦も最後の試合となりました。第十ニ試合は今大会の優勝候補の一人、ガラルホルンオウデン魔法学院が誇る麒麟児三年生レヴィン·オーフェル!! 対するはヤーバル王国魔法学院一年生チェルシー·モルフェイド。フェイさん、やはりこの試合はレヴィン選手に注目ですかね?』


 『そうですね。レヴィン選手は二年前の世界魔法学院大会で一年生にしてベストエイトに入っていますからね。要注目なのは間違いないですね』


 観客もレヴィン選手の勝利を疑っていないみたいだ。


 審判の合図で試合が始まった。


 レヴィン選手は、無詠唱でフレアサイクロンを放った。私の真似だ。


 一方、チェルシー選手は詠唱をしない。フレアサイクロンはもう目の前だ。


 皆がレヴィン選手の勝利を確信した時、チェルシー選手が呟いた。


 「ダークネススフィア」


 黒い球体がフレアサイクロンにぶつかる。その瞬間、フレアサイクロンが黒い球体に吸い込まれていく。


 皆、フレアサイクロンを消した事に驚いているけど、驚くべきはそこじゃない。


 私はダークネススフィアという魔法を知らない。


 六属性全ての上級魔法までを使える私がだ。


 『まさか闇の最上級魔法!? しかも短縮詠唱で!?』


 解説者のフェイさんが答えを教えてくれた。


 最上級魔法。本で読んだことがある。


 あまりの威力からおおやけにされていない秘術。


 それをあの少女が使った?


 フレアサイクロンを打ち消されたレヴィン選手は即座に火と土の上級複合魔法ガイアバーストを放つ。けど···。


 「レヴァンティン」


 チェルシー選手の短縮詠唱で空中に大きな光の剣が生まれ、ガイアバーストを打ち消し、勢いは衰えぬままレヴィン選手を飲み込んだ。


 光の剣が消えるとレヴィン選手が倒れている。完全に意識を失ってるみたいだ。


 審判が試合終了の合図を出し、チェルシー選手の勝利を告げる。


 『試合終了〜!! まさかまさかのレヴィン選手が敗北し、チェルシー選手が勝利しました。凄まじい魔法でしたが、あの光の剣も最上級魔法ですか? フェイさん』


 『ええ、間違いなく光の最上級魔法です。まさか二属性も最上級魔法を持っているなんて驚きです。そうそう見れる物じゃないですよ』


 解説者のフェイさんは興奮している。


 でもわかる。私も興奮している。あの魔法はそれだけ凄いのだ。


 観客が歓声をあげている中、チェルシー選手は無表情で舞台から去っていった。


 おいおいおい。何がAブロック代表の座はもらったかなだ。



 あれに勝たないといけないんだぜ。···勝てるかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る