第五話 院内大会②
院内大会は後半戦へと突入した。
今の成績は私が十四戦十四勝。ルートヴィヒも十四戦十四勝。セシルとクルト皇子は十四戦十三勝一敗。
今の所順調。でも油断は禁物。残り十五試合頑張るぞ!!
と思ったのも束の間。
八日目の第一試合が生徒会長。第二試合がルートヴィヒという強カードと当たってしまった。
第一試合が始まる。
ウリス生徒会長が無詠唱の闇魔法で攻撃してくる。
観覧している生徒達は私の負けを、想像したかもしれない。
だが誰が無詠唱は使えないと言った?
私は無詠唱で同じ闇魔法を生み出し相殺する。私の必殺技その二無詠唱。
まさかウリス生徒会長も無詠唱を使えるなんて思わなかったけど、これで条件はイーブン。
あとはどちらが手数を多く出せるかだ。
生徒会長が闇属性中級魔法シャドーランスを八連発無詠唱で放ってくる。
対する私は火属性中級魔法フレイムランスを十六連発放つ。
八発が相殺され、残り八発のフレイムランスが生徒会長に向かう。
シャドーウォールを展開し、フレイムランス八発をなんとか防ぐ生徒会長。ここで更に追撃だ。
私は火属性上級魔法フレアと風属性上級魔法サイクロンの複合魔法フレアサイクロンを無詠唱で放つ。
生徒会長はシャドーウォールをドーム型に展開してフレアサイクロンを防ごうとする。
「くぅぅぅ!!」
だが、フレアサイクロンの威力を舐めてもらっては困る。シャドーウォールにピシッと亀裂が入る。そのまま亀裂は大きくなりシャドーウォールを破壊する。
「キャアアアッ!!」
フレアサイクロンが生徒会長に直撃した。
すぐに戦闘不能と審判が判断し、審判が生徒会長に駆け寄り回復魔法をかける。
酷い火傷を負っていたけど、審判の回復魔法で完全に治った。
回復した生徒会長が私に近付き、笑顔で右手を私に向けて前へと出す。
「見事な魔法だったわ。まさかその年で無詠唱を使えるなんて」
私も笑顔で生徒会長へと右手を出して握手する。
「生徒会長の無詠唱魔法も見事でした。堅牢なシールド展開は凄く勉強になりました」
「ふふっ、ありがとう。あなたのお兄さんも凄かったし、今年の世界大会は優勝を狙えるかもね」
生徒会長は嬉しそうに去っていく。
生徒会長には勝てた。問題はその後だ。
天才である我が兄ルートヴィヒが待ち受けている。
我が兄も第一試合は勝ったみたいだ。これでお互い十五戦十五勝無敗。この試合に勝ったほうが連勝記録を伸ばす。
「やぁ、ステラ。正直ステラと戦うのは複雑だけど手加減はしないよ」
「私もお兄ちゃんと戦うのは嫌だけどやるからには全力でいくわ!!」
お互いに真剣な表情で向かい合う。
静寂が演習場を包む。その静寂も審判の声で破られる。
「始めっ!!」
審判が叫んだ瞬間、私は後方へと下がりながら無詠唱で最速魔法ライトニングをルートヴィヒ目掛けて放った。
ルートヴィヒはそれを読んでいたのか瞬歩で躱す。ライトニングを躱すだと!?
くっ、ならと水属性中級魔法アイシクルランスの無詠唱十六連発をルートヴィヒに放つ。だけどルートヴィヒは剣にホーリーブレードのエンチャントをかけながら容易に避ける。
これも避けるか。このままでは不味い。一発でかいのをかまして隙を作る。
無詠唱でフレアサイクロンを放つ。
だが、ルートヴィヒは避けようとしない。戦況を見誤ったかルートヴィヒ!!
ルートヴィヒはホーリーブレードを纏った剣を構える。
「光迅流ニノ型激迅!!」
次の瞬間光の斬撃がフレアサイクロンを斬った。
はっ!? 私の最大威力の魔法を斬った!?
私は驚きのあまり一瞬思考停止してしまった。この隙をルートヴィヒは見逃さない。
気が付くと目の前に剣を私の首筋に向けるルートヴィヒ。
「···参りました」
試合は私が敗北を認めて幕を閉じた。
試合後ルートヴィヒに近付き文句を言う。
「フレアサイクロンを斬るとかあり!?」
「試しに斬ってみたけど斬れるものだね」
ルートヴィヒは涼しい顔で文句を受け流す。
くぅ〜、めっちゃ悔しい。
これで私は連勝を止めてしまった。
これ以上は負けられない。
9日目。
私は無事に二試合とも勝てた。ルートヴィヒも無敗を維持。
セシルは二試合目でクルト皇子とぶつかったけど勝った。
10日目も私とルートヴィヒ、クルト皇子は二試合とも勝った。
セシルは一試合目でウリス生徒会長と当たり、僅差で敗れた。
十一日目。
ルートヴィヒが第二試合でクルト皇子と当たり勝った。
私とセシルは二試合とも無事に勝利。
十二日目。
セシルとルートヴィヒが第一試合でぶつかりルートヴィヒが勝利。
私とクルト皇子は二試合とも勝利。
十三日。
私は第一試合でクルト皇子と戦う。
演習場へと向かい、クルト皇子と対峙する。
「やるからには全力でこい!!」
「言われなくてもそのつもりよ!」
審判の「始め!!」の声でお互いに距離をとる。
上級魔法のフレアを詠唱を始めるクルト皇子だけど、こっちは無詠唱が使えるのだ。
聖属性中級魔法ホーリーレイを放つ。
クルト皇子は防御魔法を詠唱するけど間に合わない。ホーリーレイは直撃した。
した筈なのだ。なのにクルト皇子は血塗れになりながらも立ち上がる。
「ま、まだだ。まだ俺はやれるぞ!」
杖を構えるクルト皇子だが身体はふらついている。
「審判止めて。もう無理でしょ!?」
私の声に審判が反応し、試合を止めようとする。
「止めるなぁ!!」
しかし、クルト皇子の叫びで審判は止めるのを止める。
「なんでよ!? そんなボロボロなのになんでまだ立つの!?」
「お、俺は勝たないといけないのだ。勝たないと父上は俺を認めてくれない。だから俺は、俺は」
クルト皇子の叫びに私の戦意は薄れる。
これ以上攻撃したら下手したら死んじゃう。私はそこまでして勝ちたくない。
···だから私は。
試合後回復魔法を受けたクルト皇子が鬼の形相で私に近付いてくる。
「何故敗北を認めた!?」
「だってあのまま攻撃してたらあなた死んでたかもしれないのよ」
「俺に同情したのか!? だったら俺はお前を一生許さない!!」
「···だったらどうすれば良かったのよ!! 私は人を殺してまで勝ちたいとは思わない!!」
私は泣きながら叫ぶ。
「······すまない」
泣く私を見て冷静になったのか謝って去っていくクルト皇子。
こうして二敗目を私は迎えた。
一方でセシルとウリス生徒会長を破ったダークホースが現れた。
大会終了まで残り二日。
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