俺が猫の手を借りた結果

水原麻以

運送業界を救うニャンともニャイスな処方箋

まだ桜が散っていないというのに、じっとりと汗ばむ。俺はほてったセーターを前かごに脱ぎ捨てた。

いきなり後ろからクラクションを鳴らされ俺は車体を脇へどけた。

ずっしりと体が重い。

トランクには荷物が詰まっていて、電動自転車じたいの重量が俺にのしかかる。

俺はぐるりと首をめぐらしてため息をついた。

いったい、これから何件回ればいいんだ。いや、何百件かもしれない。スマホのアプリで未配件数が判るが敢えて見ないことにした。

想像するだに恐ろしい。

だいたい、どいつもこいつも気軽に利用しすぎる。

仕事自体はブラックじゃない。時給は1200円と高めだ。

「箸より重いものを持たない人間につとまるはずがない」と馬鹿にされた俺にも務まっている。

確かに積み荷の一つ一つは軽いのだが如何せん数が多すぎる。それもさることながら俺には顧客の態度が我慢できなかった。

宅配業者を何だと思っているんだ。

郵送で済むものまで宅配で送りやがる。

たとえばこの「ピストンアンチウィルス」と書かれたパッケージだ。

厚さ1センチほどの箱で振ればカサカサと音がする。おそらく中身は薄っぺらい紙きれだろう。

    

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