逝くべきか往かざるべきか


 言っておくが、俺は反対だ。

このままでは異世界全体を内包する時空そのものが崩壊しかねない勢いだ。

 残念ながら異世界転生はどこぞにふらっと寄って帰ってくる商品ではない。キャンペーン早々トラックに轢かれて死んだ奴が松だの梅だの得意げに成功例を晒している。


 何が異世界だ。

 勝手に死んでろ。

 明日を生きられない人々もいるというのに何という身勝手な奴らだ。

 命を通貨か何かと勘違いしているんじゃないか。



 そうSNSで吼えてみたところで、「臆病者乙w」とか「超人生ハードモード修験者△しゅげんじゃさんカッケー」とか嘲笑されるだけだ。

なかには「どうせ病気で明日死んじゃうかも知れないんだし、愉しく往かない?」というとんでもない声もある。


 この人命軽視な一大ムーブメントが過ぎ去るのを俺は嵐の夜のようにやり過ごすしかないのだろうか。


 そうは言っても、今じゃ世の中転生一色だ。昼間のニュースショーで「若者の積極的厭世法が閉塞感に突破口を開く」という特集が組まれるほどだ。


 狂ってる。

 世の中、狂いまくっている。なぁ? 死んで花実が咲くものか。だろ。

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