第40話 剣闘士の願い。


私は、見世物。

私は、闘う人形。

私は、奴隷剣闘士。


観客を喜ばすために

殺すか、殺されるかの死闘を繰り広げる。


人を殺したいわけじゃない。

剣を握りたいわけじゃない。

この運命から逃れる術がないだけだ。


いや、この運命から逃れた奴がいた。

そいつが、猛獣と闘う朝のことだった。

監視の目の届かない唯一の場所、トイレで死んだ。

トイレには、便をした後に尻を拭く洗浄用の海綿付きの棒がある。

その海綿棒で喉を突き、命を絶ったのだ。

猛獣に喰われて死ぬより

汚物まみれで死ぬことを選んだ男。


真似できない死に様だ。


私の死に場所は、アリーナにある。

闘う相手が、人でも猛獣でも

観客を喜ばせながら、死んで行くのだ。


自分の実力からすると

勝ち続けて、奴隷から解放されることはないだろう。


この生を終えて

生まれ変わることができたなら

自分の運命は、自分で決めたい。











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