異世界に行ったら家族同然のペットが人になって本当の家族になりました。

るーも

第1話 プロローグ

「ははっ……」


 俺はまだ朧気に見える家の中で、周りを囲む家族を見つめていた。


 犬のリュウ、猫のトラ、インコのルビー、トカゲのココ。

 俺の家族で、俺を唯一認めてくれた家族。



「ごめんな」


 俺がいなくなった後、こいつらはどうなるのだろう。

 早く見つけてくれるかな。

 新しい家族は見つかるかな。

 最後まで傍にいてやれなくてごめんな。


 自分の命が無くなる感覚を覚えながらも、春樹は家族の事ばかり考えていた。



 春樹は小金持ちの家に生まれた。

 父親が地主でお金に困る生活を送る事はなかった。


 だが両親はとにかく仲が悪かった。

 人の気持ちを考えられない父親の暴力的な性格。

 母親は耐えていたが次第に自分の事で精一杯になり、いつも春樹は一人だった。


 学生時代は金持ちという事で、下心を持った人間が集まってきた。

 春樹自身も人間の汚い部分に敏感であり、次第に人と距離を置く。

 周りの生徒が近寄る事もあまりなくなった。



 それでも成人した春樹に恋人が出来た。

 自分自身の生い立ちを思い返し、また同じ事を子供に繰り返すのではないか。

 そんなことを不安に思うくらい、その相手との結婚を意識していたある日。

 その女性は亡くなった。



 不慮の事故。

 立ち直る時間も許されず、警察には犯人扱い。

 周りの人間は野次馬になり、興味本位で色々聞いてくる。



 その頃には、春樹の心はもう塞がっていた。

 小さい頃から家族も友人も春樹を見ていなかった。

 唯一心を開いた相手は亡くなり、余計に人間の醜さを見せつけられた。



 そんな春樹の支えは家族だった。

 リュウもトラもルビーもココも、春樹と遊ぶことが大好きだった。

 春樹が春樹でいられるのは、家族と一緒の時だった。


 お金には困らないが生きる希望を失っていた春樹は、地主だった父親の土地に立つ家に住み、そんな大切な家族とひっそりと暮らしていた。


 いつもと同じ、何気ない家族との日々。

 無気力でただ生きていただけだが、それでもこの家族は大切に思っていた。



 ズキンっ!!

 突如春樹の頭に強烈な痛みが走る。



「……!?」


 訳も分からないまま、すぐに床に倒れる。

 体の言う事が効かない、恐らく脳梗塞だ。



 家族は心配そうに春樹に駆け寄る。

 だが何も出来ない。

 人ではないから、助けも呼べない。



 春樹は自分自身がどうなるかより、家族の事を思う。



「どうか……こいつらが幸せに……」



 そう願ったまま、春樹は目を閉じた。

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