Mother

生まれの不幸を呪い、悲嘆する由美子を呼ぶ声がする。

「まさか…お母さんなの?」

すると鉢植えのルフレが頷く。

花は叱責した件を懸命に詫びた。

「待って…本当にお母さんなの?」

娘は二人だけの秘密で認証を試みた。

「試合放棄って嘘よ。本当は反則負け」

「えっ、何で?」

花が戸惑う。

「私、限界が見えたの。テニスで婿を探せってお父さんが言うけどムリ」

母も本心を明かした。熱中症を理由に畑をさぼりまくる夫に喝を入れたかった。「あんたがちょっと溺れたら本気出すと思った」

ところが、手元が狂ったのだ。殺意はなかった。

「何だか私達、バカみたい」

姿かたち、時空を超えて再会する事で母子は問題を解決した。あの男はもういない。

しかし腑に落ちない点がある。ルフレに宿る母本人の記憶。誰がどこからサルベージしたのか。

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