第7話「転生の機会」

夜になった

全ての窓は、灯りを消している

今、彼の中では夢の出来事だろう


日の下で、ぽつんと立つ少年になり、

日差しが強く、視線の先で畑道を見ている


空に浮かぶ雲から私は見下ろす

彼の成長を見守るために、

わがままはしないつもりだ


月が顔を出し引っ込んで、

また朝はやってくる

風が通り抜けると、

肌にあたる柔らかさで、少年はほほえむ

風が終わると麦畑の穂は、

それまで揺れていたのをやめ、

少年は顔をあげた


それと同時だ

夢から覚める時間だと気づいた時、

夢は眠りの中の出来事だったと悟るのだろう


私のそれまでの愛情はどこにいくのか、

ワンカット分も残さず消去してしまうのだなと

寂しくなる


いっそ、朝が来る前に消してほしい

目が覚める前に


私の魂が再び冥界に戻る頃、

夜よ、再び訪れる頃には、

彼に会わせてくれるのだろうか

それとも、二度と会えないのだろうか


もし後者ならば、

転生した世界など、

私は望みなどしない


息子よ、生きているか?


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