変化
「いい加減にしろ」
ギシギシと多肢を鳴らしながら高畑が乱入した。せわしなく荒瀬真澄を捕らえると警告した。「この女は真澄の『娘』だ。人を騙す程度には精巧だが」
どちらを信じればいい。私には神の視野が欠乏している。そこで一か八か賭けに出た。
「もう、ウンザリ。私は困っている人を相談援助する未来を選んだの。こんな茶番で私を試して楽しい? だったらこっちにも考えがある」
不本意ながら肉体言語を用いる事にした。遺伝子レベルで「調製」され、果てしない眠りに耐えるだけの体力が秘められている。指の関節がスイッチだ。鳴らすと腹筋が割れる。体形の変化に追従できず上着が弾け飛んだ。
「な、何をする気だ」
多肢機械が柄にもなく怯えている。私は無言で蛇腹を外しに掛かる。「次はその女も始末する。どうせお前達は施設ごと燃え尽きる運命なんでしょ」
「勘弁してくれぇ…」
高畑は蚊の様にすすり泣いた。
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