補完編その4 貴重品を盗んだ作戦(作戦その2)、失敗の裏側 俯瞰視点(1)

「テオ様、おはようございます。朝食の準備が――ごぶっ!?」


 朝。いつものようにノックのあと扉を開けたテオの従者ライアンスは、室内の光景を見て盛大に噴き出しました。

 なぜならそこに居たのは、



 銀髪をギブソンタックにして、ティアドロップ型のサングラスをかけたテオ。



 主が女性用のアレンジを施し吟味していたため、そんな反応になってしまったのです。


「ああ、おはようライアンス。どうかな、俺の髪型と顔は?」

「どうかなってアナタ真顔でなにやってんですか!? 突然一体なに考えてるんです!?」


 ライアンスはおもわず走り寄り、唖然とテオを見つめます。

 ゆうべは、普通の髪型と顔だったのに……。昨夜起きたというトラブルが原因なのか? しかし何がどうなったらこういうことになるんだ?

 全くワケがわからず、ライアンスは唖然と見つめました。


「これか? これは、ジュリエットを守る為の対策だよ」


 ゆうべの一件の動機は、所謂嫉妬。そこで他者が自分への興味をなくすよう、外見を変えているのだと詳説しました。


「な、なるほど……。しかしそれは、度が過ぎているかと……。別の形で興味をなくさせた方が、よいのではないでしょうか……?」

「いや、こういう容姿の変更が適切なのだよ。無論他にも方法はあるけれど、それらには多々問題があるのだよ」


 たとえば素行を悪くするなどして、評判を下げる。そうすると『家』の評判を下げかねない上に、なによりそんな者と婚約している者の――ジュリエットの評判を、下げかねない。

 他の作戦にはこういった弊害が生じてしまうため、テオはこの作戦を選んでいたのでした。もっともこれもこれで、失うものはあるのですが。


「他にも『即効性』などを考慮して、これに絞ったのだよ。それに当然、この姿は永続しない。卒業するまで、およそ一か月弱だけだ。すでに、当主夫妻――父さんと母さんの許可は取ってあるぞ」

「……ぁぁ、あれはそういうことだったのですね……。…………旦那様達がなんとも言えないお顔をされていた理由を、ようやく理解できました…………」

「??? ライアンス?」

「……なんでもございません、差し出口をお許しください。…………ところでテオ様。その組み合わせにされるのですか?」

「今し方問いかけていたように、まだ検討中だ。ライアンスは、どう思う?」

「そうですね……。かなり異様、ですね」


 女性用の髪型+派手なサングラス。街で見掛けると、誰もが二度見をしてしまうレベルでした。


「ですがそういった目的でしたら、少々弱いかもしれませんね。テオ様のお顔はとても品があり、所謂かなりの美形です。そのため異様ではありますが、意外と似合ってしまっていますね」

「…………そうか、ならば変更が必要だな。すまないが、ライアンス。一緒に、最適な組み合わせを探して欲しい」


 そうしてここからは従者も加わり、2人での容姿変更作戦がスタート。通常とは真逆の、『似合わない』『気持ち悪い』の追求が始まったのでした。

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