補完編その3 脅迫状偽装、失敗の裏側 俯瞰視点(2)

「ですね。ではテオ様、ごゆっくりどうぞ。素敵なお時間をお過ごしください」

「ああ、そうさせてもらうよ。ライアンスも、お疲れ。ゆっくり休んでくれ」


 そうしてテオは椅子に腰かけ、手紙を読み始めました。そして――


   〇〇〇


 そして――


「………………ジュリエット、俺のためにわざわざありがとう。君のおかげで、#日曜日明日も頑張れるよ」


 17通目を読み終えたテオは手紙達を大切に仕舞い、ジュリエットの家がある方角に向かて微笑みます。そしてゆっくりとベッドに向か――おうとしていたら、部屋のドアがノックされました。


((ん? こんな時間になんだ……? 有事の発生か……?))


 瞬時に当主代理の頭に切り替え、速やかに扉を開けます。そうすると予想通り従者であるライアンスがおり、しかしながら――。


「テオ様。おはようございます」


 そのあとは、予想外。ライアンスに焦った様子は少しもなく、穏やかな表情で一礼が行われました。


「おはよう、ございます……? …………ああ、そうか。またやってしまったようだ」


 午前6時20分。そんな時間を示す掛け時計を見やり、テオは極僅かに肩を竦めました。

 本日彼が手紙に費やした時間は、なんとおよそ6時間。じっくりとジュリエットを感じていたら、朝になっていたのです。


「??? またやってしまった、ですか?」

「いや、気にしないでくれ。わたくし事、些事だ」


 この徹夜は、時々やってしまう。大きく疲弊している時は高確率でやってしまうなため、テオはさらっと首を左右に振りました。


「今朝のテオ様はスッキリされていて、顔色もよろしいですね。ジュリエット様のお手紙は、やはり効果抜群ですね」

「そうだな。ジュリエットのおかげで、日曜日今日も一日働き続けられるよ」


 ビッグバン後のテオにとって、ジュリエット>>>>>>>睡眠。そのため彼は実際に完全回復しており、キビキビとした動きでテオの新しい一日が始まったのでした。



 なお――。この時のライアンスは、まだ知りません。

 この数か月後にテオが100000本の百合を送ろうとして、邸内が大騒ぎになることを――。


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