第2話 駒を操って、婚約破棄作戦スタート! マリィ視点(2)
『そんな……。あのジュリエット嬢が、あんな真似を……』
『裏では、そんな事をしていただなんて……。ひどいわ……』
周囲の評価は既に下がり始めていて、お姉様を見る目も変わってきている。
実際にマイリスはそれなりに綺麗で、そういう意味でも信憑性がありますものね。おまけに演技もなかなか上手で、いい具合に進んでいますわ。
「皆様っ、テオ様っ、マリィも……っ。私を信じてください……っ」
「わたくしも、お姉様を信じたいですが……。その……。マイリス様が嘘を吐いているようには、見えませんので……」
『実妹までもが、そう言っているんだ。間違いなさそうだな……』
『ええ……。そうね……』
わたくしもさり気なく援護射撃を行って、お姉様の立場を更に悪くしてゆく。
これで、周囲の評価ダウンはほぼ成功。あとは一番重要な人、婚約者のテオ様を揺さぶっていって……っ。今夜最大のイベント、婚約破棄を宣言させれば――
「その手紙。それは本当に、ジュリエットが宛てた物なのだろうか?」
――残念ながらテオ様はお姉様を信じていて、まだ信用してはいません。
けれど、それは想定内。ここで、例の『保険』の出番ですわ。
「スロス様、証拠はあります。こちらの手紙はジュリエット・ミラ様の直筆であると、筆跡を鑑定しております」
マイリスは懐に忍ばせていた鑑定書を広げ、テオ様、そして他の参加者にもしっかりと見せた。
「御覧のように第三者が自信を持って、ご本人だと断言しました。ジュリエット様、言い逃れできませんよ」
「そんな……。私は、書いていないのに……。どうして、そんな結果になるの……」
その答えは、わたくしが筆跡を再現したから。
((お姉さまぁ。根性と執念があれば、何だって出来てしまうんですのよ?))
この手の作戦は、以前から――今回の名案が生まれる前から考えていて、偽装できるように練習を続けていた。
手にタコが出来るくらい必死に繰り返して、わたくしは貴女の筆跡を――筆圧、筆勢を手に入れましたのよ。なので、
『同封した脅迫状は偽装ですが、筆跡は完全に再現できています。作戦を実行する前に第三者に鑑定を依頼し、鑑定書を必ず作成しておいてください』
接触の際にこういうメッセージも伝えていて、マイリスは実行。駒は指示通り動いて、完璧が状況が出来上がっていますの。
((鑑定書は、絶対。これさえあれば、嘘もまことになる))
そうなったら、モチロン、アレですわ。ずっと味方だった婚約者は敵となって、今夜この場でテオ様は――
「失礼。その脅迫状を、近くで見せてもらえるかな」
――顎に手を当てていたテオ様は手紙を手に取り、じっっと、穴が開くほどに見つめ始めました。
な、なんですの……? この方、何をやっていますの……!?
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