第2話 駒を操って、婚約破棄作戦スタート! マリィ視点(1)

「テオ・スロス様っ! スロス様の婚約者であるジュリエット様の事で、大事なお話がございますっ!」


 あれから3日後の夜。予定通りランティズ侯爵家で夜会が催されて、わたくし達姉妹とテオ様も参加。立食形式の賑やかで華やかな時間が流れていると、それを切り裂く大声が響き渡りました。

 彼女はヤリュズ子爵家の長女、マイリス。学舎でのわたくし達の同級生であり、わたくしの駒ですわ。


「マイリス様が、私に……? なんなのでしょう……?」

「俺も、皆目見当がつかない。マイリス嬢、どうしたというのだ?」

「……実は、ですね……。ワタシはずっと、何度も、ジュリエット様から脅迫を受けていたんですっ!」


 彼女は右手に持っていた手紙を広げ、故意に声のボリュームをあげて読み上げる。その結果、


 マイリスは、恋のライバルになりかねない――。

 だから、テオ様に近づくな――。

 もしも従わなかったりこの手紙を誰かに見せたりしたら、伯爵家の力を使って貴方の家を潰す――。


 お姉様がこういう悪事を働いていたと、参加者全員に知れ渡った。


「圧力をかけられるのが怖くて、ずっと黙ってました……。でもこういう人は、約束を守ってくれるとは限らない……。テオ様と結婚したら、こんな証拠を持っているワタシは家ごと消されるかもしれない……。だから……。勇気を振り絞って、この場で打ち明けました……っ」

「ま、マイリス様……。なにを、仰っているのですか……? 私は、そんな真似はしていません。ライバル視をした事も、脅迫状を送った事もありませんよ……」


 そうですわよね、ジュリエットお姉様。これは、わたくしが捏造した手紙ですもの。身に覚えがありませんわよねぇ。



 ヤリュズ家の、マイリス。



 彼女は入学時からテオ様に好意があって、お姉様を快く思っていなかった。どうにかして自分が婚約できないかと、日々惨めにアレコレ考えていましたの。


((そんな時。丁度わたくしの中で名案が生まれて、))


 利用する事にした。


『貴女にとっておきの物をプレゼントします。これをお使いください』

『えっ!? あっ、貴方は……!?』

『自分は、同類ですよ。貴女と同じく、ジュリエット・ミラを憎む者ですよ』


 証拠が残らないよう変装をして接触し、こうして『駒』の出来上がり。わたくしは一切疑われずに、鉄槌を下せるようになったのですわっ。


((ふふふふふ。しかも。この作戦には、ちゃーんと保険も用意していますの))


 だから、お姉様。どんなに否定しても、無意味ですわよぉ。

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