-第7話-授業からのヒント
今日も7:20にセットしてある目覚まし時計に起こされた。
ああ、そうか昨日は考えているうちに寝落ちてしまっていたのか。
結局昨日は安芸さんからのRINEに動揺してしまい、大して「幸せ」という言葉について深く考えることが出来なかった。
まあ今日の授業中にでも考えてみよう。
そう思っていつも通りドア付近に立ち、一番最初に電車から降りた。
改札を抜けるといつものように紺色の大群が大移動を行っていた。
あ、安芸さんだ。
カモメの大群の中の鶴のように1人だけ異色の雰囲気を醸し出す彼女はとても目立っていた。
今まで認知している程度だった彼女のことを1度お願いされたくらいでここまで意識してしまうなんて俺は現金な男だな。
ふと彼女の方を見ると、安芸さんは微笑みながらこちらへ手を振ってきた。
みんながあの安芸さんから手を振られているのは誰かと探すようにこちらに注目する。
公衆の面前だから話しかけてきたりはしないのだろうが、手を振られた先は間違いなく俺だ。
俺はみんなの視線を受けながらもあたかも自分ではなく後ろの生徒では無いですかねという雰囲気を出し、周りも名前も顔も知らない俺のことなど忘れてここの会話に戻って行った。
今の行動はお願いをした立場である彼女なりの気遣いなのだろうが、俺のことを少しでも気にかけて貰えるようになっているというのは素直に嬉しかった。
俺は悪目立ちはしたくないし、自意識過剰だとは思われたくないので、彼女に振り返すことはせず彼女を遠目で見つめながら真っ直ぐ学校に向かうのだった。
その後登校中はいつも通り黙々と歩き、有象無象と共に定刻通りに登校した。
朝礼で担任が出席を取り終わり出ていく時にふと時間割を見てみると1限は生物。
生物は暗記科目だからやる気がしないな。
まあ明日は休みだしそこだけを希望に今日も学校に存在だけしておこう。
授業の方はと言うといつもぼーとしていて、聞いていないからよく分からないが、先週までの断片的な情報を繋げるとヒトの脳についての内容だったと思う。
程なくして白衣を着た中年の生物教員が朝礼が終わるのを待ち構えていたように直ぐに入ってきた。
まあ俺は授業よりも考えたいことが山ほどあるから、彼がチョークを握ったのと同時にそちらに手をつけ始めた。
「幸せ」とはなんだろうか。何をしている時に幸せになれるのか。
例えば俺は毎日何事もなく暮らせているだけで幸せだと思うが、安芸さんはそれだけでは足りないし俺よりも恵まれている今の彼女自身の現状でも満足出来ないのだろう。
「このドーパミンというのは快楽ホルモンと呼ばれていて、少なくなると快楽を感じにくくなってしまう。そうすると楽しめない、美味しく食べることができない、すぐ飽きて疲れてしまうようになり、次第に気分が優れないと感じるようになってしまう」
「脳からはドーパミンのほかに、アドレナリン、セロトニンといったホルモンも分泌され、これらは三大ホルモンとも呼ばれている」
少し間延びした生物教員の授業の声が思考の妨げになる。
全く聞いていなかったが、そういえば授業もちょうど脳科学の範囲だったな。
ドーパミンか。これは幸せをどうすれば感じさせられるかにも繋がってくるのかもしれない。
確かドーパミンは音楽を聴いたり、瞑想したり、あとは自分の好きなものへの期待を感じることで放出される物質だったはずだ。
つまり安芸さんの好きなものを探れればヒントを得られるということではないだろうか。
彼女の好きなものなんて検討もつかないが、誰しも食べ物に1つ、遊びに1つくらいは好みのものがあるだろう。
ふと、俺には昨日手に入れた切り札である安芸さんの連絡先があることを思い出した。
男子の誰もが欲しがるあの天使様の連絡先を彼女自身の悩みを解説するために使えるなんて俺は傍から見たら恵まれた男なんだろう。
実際彼女の役に立てるのであれば俺としても嬉しいが。
俺は安芸さんへのRINEのメッセージの送り方についてに考え方をシフトしたのだった。
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