大魔王のなさけ
水原麻以
会敵
「魔王!覚悟しろ」
ここは地下迷宮の最深部。
百戦錬磨の勇者が凄腕のパーティーを引き連れて、魔王の寝室になだれ込んだ。
ところが、くだんの仇敵は美人のダークエルフを枕にして夢うつつ。
「何だこりゃ?」
強化レベル∞のバスタードソードがへなへなと振り下ろされる。
勇者があっけにとられていると、もぞもぞと魔王がうごめいた。
「…何だ。お前らか」
面倒くさそうに言われる。
「お、お前らって…」
小馬鹿にされたと感じたのか勇者は憤った。再び滾る血潮を燃料にした。
「貴様が野に放った魔物のせいでどれだけ無辜の血が…」
「…あと5分だけ余を寝かせろ」
生あくびを噛み殺し、魔王は珠のような肌の美人にほほを寄せた。
「この野郎! 死ね!!」
キレた勇者は剣を振り下ろした。
すると、ガキンと重い金属音がした。虚空でぽっきりと歯が折れたんのだ。
「そ、そんな…」
この剣は、勇者討伐記録上、最凶最悪と恐れられたミスリルドラゴンをたった今しがた斬り捨てたばかりだ。命からがら逃げかえってきた勇者の話によれば最高クラスの甲冑を着た白骨死体が百や二百では済まないという。そんな屍累々の巣におわすドラゴンを瞬殺したレアアイテムである。
「だから言ったろう。あと五分寝かせろと。お前は余のせめてもの願いさえも無碍にした。そんな卑劣漢に英雄が勤まるものか。さぁ、諦めて退却せい」
魔王は逆に慈悲を与えた。さて、どうしたものか。
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