ゲーオタアサシン、狙い撃つ〜高校生のゲーマーで殺し屋だけど、彼女と楽しく遊びたい〜

赤月ソラ

ゲーオタ暗殺者の二重生活

プロローグ

まえがき


 大変お久しぶりです。一年以上失踪していたゲースナですが、新作執筆とともに再開いたします。

 ですが最近読み返してみて、未熟すぎてあまり納得のいかない作品だと痛感いたしました。ですので、この機会にリメイクし、一から投稿することを考えております。


 いまだフォローを外さずにおいてくださった読者の方々、大変ありがとうございました。


 そしてこの作品を開いてくださった皆様。

 未熟な作品ですが、是非お読み頂き感想をくださると幸いです。


_____________________




 俺――ユーガは、蘇生アイテム《フェニックスの赤羽せきは》の待機時間が終わるなり、目を開けた。

 その目に映ったのはバチバチとスパークが走る、今にもそれを吐き出そうとする巨大なドラゴンの口……いや『あぎと』だった。


「マジかぁ」


 復帰した瞬間に攻撃をされるって、あるあるではあるよな。

 ただそれが体力満タンの時に受けても余裕で消し飛ぶような、レイドボスのブレスだったならログアウトしたくなる。


「……ってそんなの喰らってたまるかよ!」


 レイドボスのブレスを喰らってやるつもりもない俺は、装備していた長身のスナイパーライフルを斜め下に向け叫ぶ!


「《ブラストバン》!!」


 真っ白な鱗をもつレイドボス《天雷の神王竜 ゼウス・デウス》の口から雷の塊が放たれる寸前。

 ライフルの銃口から人一人を軽く吹き飛ばすほどの爆発が起こる。その爆発で吹っ飛んでるのは俺なんだが。


「うぇっ、ぐっ」


 変な声が出たが、視界に広がる平原の地形を変えるほどの電気の塊を避けられたのなら安いものだ。

 スナイパーライフルの使い方としては自分でも一言もの申したいが、緊急時だから仕方ない。

 そのおかげでレイドボス討伐に参加していた名も知らぬ同志たちが吹き飛んでいるのを眺める側に回ることができた。


「おいユーガ! お前がやられるなんて珍しいな。トッププレイヤー引退か? んん??」

「うっせー筋肉野郎! 前衛のくせに後ろで高みの見物かァ!? スタンからハメられたんだよ、つか俺が死んでる間にどれだけやられた?」


 みっともない着地を披露した俺を笑いに来たのは、パワーファイターだと主張してやまない巨体と大剣、重鎧を装備したプレイヤー、ガオウだ。


「筋肉野郎は前線にいるSTR極振り勢に言ってこい……! 回復してただけだよ。前線の四割、後衛いくらか。復活には少し時間がかかるだろうな」

「おいおい、狙撃で攻撃を邪魔してた俺が少し抜けただけでそれかよ。戦線大丈夫か?」


「今のブレスでさらに消し飛んだがな」


「大丈夫じゃねーなそりゃ!」


 悪友と揃って、この雷の雨を降らせているレイドボスを見上げる。

 わらわらとアリが群がるようにプレイヤーが突撃しているが、かまわず薙ぎ倒してやがる。これだからレイドボスってやつは。


「お前は何してるんだよ、ガオウ。俺が死んでる間、指咥えて見てたのか?」

「こんなランダムに雷が降ってくるところで特攻なんざ仕掛けられるかよ。あれ予備動作短すぎるし当たったら高確率スタンだぞ?」

「あーやっぱそうか。俺さっき一発でスタンしたもんな」


 復活した時点での削れたHPをアイテムで回復しつつ現状確認。


 真っ青な空からランダムで降ってくる雷には高確率スタンがつき、おまけにダメージもバカにならない。

 そのうえ絨毯じゅうたん爆撃ならぬ絨毯雷撃が始まったのは、三本あるHPゲージが二本目に入ってからだ。

 うーん……悪い予感しかしねぇな!


「レイドボスってのはどれもこんなんなのか? 命が紙くずみたいに消えていくんだが」

「あぁ安心しろ。まだ体力半分も削れてないから、たぶんもっとエグいのが待ってる。それに序盤でこれと同じくらいエグいやつも倒したことあるから」

「そんなやつ倒すとかトチ狂ってんなお前ら」


 狂人認定されるわれはない! 俺と彼女はいたって健全な範囲でゲームを遊んでいるに過ぎない。廃人と言われるような奴らと一緒にしないでほしい。


「さて、この落雷はあの角折れば止みそうだけど。さっきからこれ見よがしに光ってるからな」

「とはいえ、あの高さにある角をどうやって叩き折る? 頭下げさせないと届かないぞ」


 さっきから雷が落ちるたびにピカピカと光っている角を見て、俺とガオウは顔を見合わせる。雷が降るたびにあの角が光っているから、とりあえず壊せばなんらかのアクションは起こるだろう。

 だが問題の角は俺たちから見てかなり高い位置にある。遠距離攻撃主体の俺ならともかく、ガオウのような近接ファイターだと攻撃するのは難しい。


 だが届かないからと言って、手を出さないなんて選択肢はないわけで。

 さっきから平原とプレイヤーと、ついでに俺を丸焦げにしてくれやがった雷を止めないと楽に討伐ってワケにはいかないからな。

 さて、


「よし、お前突っ込んで折ってこい」

「はぁ!? おま……ッ、誰がやるかそんな自殺行為!」

「接近戦やってなんぼの《剣闘士グラディエーター》だろうが! 行かねぇんなら行かせてやるよオラァ! 《ブラストバン》!」

「なっ……ぎゃああぁぁぁ!!!」


 言い訳並べてうだうだ言ってる肉カカシを爆風で前線に出荷したので、後衛攻撃職たる《銃手ガンナー》の俺は自分の仕事を始めよう。ヘイトが別に行けばやりやすいからな。

 非道ひどい? 行動したもん勝ちなんだからいいんだよ。


「さぁて……仕事の時間だ」


 雷神の角を叩き折るべく、真っ黒な愛銃を構える。

 銃弾を撃ってしまえば、奴のヘイトは俺に向き始める。そうすれば紙装甲の狙撃手など雷によって塵に還されるだろう。

 この弾丸は確実に当てなければならない。激しく動く奴の角に。

 だから――。


『――ギュォォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!』


 チャンスを待つ。

 そのとき、空を駆ける銀色の閃光が、ゼウス・デウスの角を直撃した。


「最高だ……!」


 それを見て俺は笑う。

 銀色の光は弾かれたが、どんな顔をしているのか見なくてもわかる。

 その期待に応えるべく、俺は標的に狙いを定める。


 ゼウス・デウスの二本の角。彼女が揺らしてくれたおかげで、角の揺れ幅は大したことが無い。


「彼女の作ったチャンス、彼氏が無駄にするわけにはいかねーよなぁ?」




 白銀の剣が舞い、黒い狙撃手スナイパーが嗤う。

 ここは幻想を終わらせたゲーム、『Lostロスト Fantasyファンタジー Onlineオンライン』。


 現実リアルとは違い、彼らは楽しそうに笑う。



『オリステラ十二神竜、《天雷の神王竜 ゼウス・デウス》が撃破されました』


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