俺様作家の言い分
「だって、こいつ。ネオ文豪21の分際でイラストを募集してやがるのよ。あーっひゃっひゃ」
和名が目をつけたのは、とあるアマチュア作家ネオ文豪21(nn21)氏の近況報告だ。小説の投稿とは独立して作者の近況を綴るブログ機能が備わっている。その言動が匿名掲示板ユーザーの目に留まりウォッチング対象とされてしまった。。ああだのこうだの親でもないのに更新される度にスレッドが盛り上がる。本人にしてみればとんだ災難だ。有名人でもない素人を常時監視する悪趣味な人間に常識を説いた所で時間の無駄だ。嵐をやり過ごすしかない。ムキになって反論すれば思う壺だ。
「ござるよ」には小説の各ページに任意の画像を挿入する機能が備わっており、絵心のある作家は自作のイラストを掲示している。ただ、無断転載も後が絶たない。そのような不埒物は問答無用で退会処分だ。折角投稿した作品も消える。どうしてそこまでして挿絵が欲しいのか。
ラノベやWEBノベルは絵が口ほどにものをいう世界だとされている。表紙買いと言って本文よりも美少女キャラのカラー表紙に魅かれて衝動買いする読者がいるぐらいだ。
とまれ挿絵を欲しがる作家は少なくない。それがどうしたというのだ。
あまりに笑うので何か因縁があるんじゃないかと妹は勘ぐった。
「おねえちゃん、NN21さんに親でも殺されたの?」
もちろん、姉妹の両親は二人とも健在だ。齢五十をこえてピンピンしていて、今日もシェアオフィスにリモートワークしに出掛けた。
「別に。でも、こいつの態度が気に入らないのよ」
姉が言うには、NN21なる人物の作品はどれも「お気に入り数」が二けたに満たない。閲覧数も半年で百以下で読まれていないに等しい。
それでも、彼本人にとっては相当な自信作であるらしく、たまに書き込まれる誤字脱字や文法の指摘を非常に高圧的な態度で切り捨てている。
自覚があるのか無いのか生まれつき問題児なのかNN21の印象はあまりよろしくない。
「NN21さんと波長の合うファンがいないとも限らないでしょ。蓼食う虫も好き好きよ。スレ立てするおねーちゃんみたいな変人も多様性の一つよ」
美衣は和名家で唯一の良識派らしく、攻撃対象を擁護した。
「あんた、これを見てもまだそんなことが言えんの?」
和名はブラウザーをスクロールアップして、NN21の問題発言を示した。既にサイトからは削除されているが拡散してしまっている。あちこちに転載されたものの一つだ。
『俺様の最高傑作にイラストを寄贈する栄誉を賦与してあげようというのですよ? まだ、応募が一人もないってどういうことですか。絵師の自己顕示欲ってその程度ですか。ちっぽけな承認欲求ですねぇ。向上心がないならSNSにに絵なんかアップしなきゃいいのに』
なんという傲慢不遜。
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