容疑者

「白田まゆこさんと最後に遭ったのは昨日の17時38分で間違いありませんか?」


起き抜けにそんな事を聞かれても、頭が回らない。

「いや、俺……ずっとスマホ見てるわけじゃないんで」

呉井尊くれいたけるはボサ髪を掻きながら眠そうに答えた。

刑事たちをセンサーライトが丸く照らしている。その向こうで双子の光が回っていた。

「貴方がモールの玄関から出てくる所を防犯カメラが捉えてるんです。その三十分後、その場所でまゆこさんが発見されました」

タイムスタンプの入ったハードコピー、そして、血まみれになった現場の写真が示された。

「だから、俺は何も知らないんですって! だって、まゆこが本当に死ぬなんて!」

慌てふためく尊に大柄の刑事がニヤリとした。

「私は最後に別れた時間を聞いてるんですよ?」

「あっ……」

尊はとっさに手を口に充てた。だが、後の祭り。

「署までご同行願いましょう」



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