デジタルトランスフォーメーション
「これは根深い問題だぞ。しかも刈り取る機会だ。逃したら日本はお先真っ暗だ。永遠に」
横山デスクは声のでかい男性だけが主導する会議の未来を暗示した。確かに男性特有の病気など当事者が主体の問題に女性の発言権は不要だろう。だが横山が見る限り朝売の経営会議だけでなくSDG'sやコロナ後を扱う検討会や研究会はまるでコピペしたように男性が支配的だ。
「ダメな日本の縮図だよ。男性だけの視点がものの見事に切り取られて総意にされる」
速水穂香はクスっと笑った。「マスゴミ叩きみたい」
「叩き直すなら今しかない。男女参画勢がうるさいから美人の微笑み組を配して男だけで話をどんどん進める」
「そういえば、彼女たちは黙っていますものね」
「つまり社会の片側しか見ない会議だの決議だの無意味だろ」
「でも…」
穂香に引っかかる点があった。美徳というキーワードだ。
「私、女性の美徳がわかりました。海外で活躍する日本人女性って多いですよね。研究者の六割は優秀な女性って言います」
「それは日本に居場所がないからだろ」、と横山。
「違うんです。だって成績に男女関係ない証拠です。できる人にはちゃんと席が容易されてます。そう、これは差別じゃなくて区別なんです」
興奮気味の穂香は「嫌なら女は日本を出ればいい」とまで言い出す。
横山は困った。この子にノーマライゼーションや多様性の概念を教えたものやら。朝売経済は医療介護現場も取材対象だ。
「女は体力や精神面でハンデがあるんだぞ。克服しがたい性差を補正してこそ同じ出発点に…」
「そんなどうにでもなりますよね。テレワークなら外国から参加できるし性別も関係ない」
穂香の瞳は燃えていた。
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