発見!
「リリアーナ嬢? ……それに、ヴァンとケヴィンも」
隠し扉から出てきた王子は、ぱちぱちと目を瞬かせた。彼の後ろには、従者のヘルムートの姿もある。
ええええええ何これ、何なの。
これどういう状況?
王子様を探すために隠し部屋に来たら、隠し部屋の中から王子様が出てきたんだけど?
「お前ら、なんでこんなとこにいるんだよ」
私が口を開く前に、ヴァンが疑問を投げかけた。
それを聞いて、ヘルムートの眉が吊り上がる。
「それはお前らが……っ!」
「昨日、君たちが図書室で何かしてたのが気になってね。今朝早くから調べてたんだ」
「わ……私たちは何も……!」
隠し部屋を開ける前は、ちゃんと人払いをしていた。入るところを見ていた生徒はいなかったはず。
私の反応を見て、王子は苦笑した。
「直接ここを開ける現場を見なくても、わかることはある。あんなに大騒ぎしながら図書室に入ってきたのに、突然気配が消えたら気になるよ」
「あ……」
確かに言われてみればそうだけど!
まさか、そこまで観察されてるとは思わなかったよ!
あの時は緊急事態だったとはいえ、我ながらウカツすぎる。
「隠し部屋に入ったはいいけど、ちょうど中に入ってる時に地震が起きて、出られなくなってたんだね」
ケヴィンがそこら中で倒れている本棚を見て言った。さっきまで、隠し扉の前は本棚が倒れかかっていた。こんな状態じゃ開けるに開けられない。その上、秘密を守るために隠し部屋には防音処理がされている。大声で叫んでも、見つけてもらえなかったんだろう。
「俺たちのことはいい。そもそもお前ら、こんなところで何をしてた?」
じろり、とヘルムートがこちらを睨む。王子たちの立場からしたら、こんな隠し部屋にこもってたなんて、不審以外何者でもないよねー。
しかし、ヴァンは平然とヘルムートを睨み返した。
「俺たちも、昨日偶然ココを見つけたとこなんだよ。何か利用できるようなものはないかって調べてたら、結構時間が経ってたってだけで。お前らのほうこそ、中で何か見つけなかったか?」
「おま……」
「いや、何も」
反論しようとした従者を、王子が止める。
「あそこには大きな鏡がひとつだけだっただろう。銀色なのに、こちらを映さないのが不気味で、手も触れなかったよ」
「俺らも似たようなものだな。さんざん調べ回ったが、鏡以外見つからなかった。……とんだ骨折り損だ」
本当は見つからなかったどころの話じゃないんだけど、バレたらただじゃすまない。私はじっと押し黙ってふたりのやりとりを見守る。
「王立学園には、王宮同様古代の遺物があるとは聞いていたが、こんな肩透かしもあるんだな。それで……今外はどうなってる?」
「大騒ぎだ。図書室の惨状を見てもわかる通り、地震で学園どころか王都の周りはぐっちゃぐちゃだ。特に女子寮は建物全部が倒壊してる」
「女子寮が?」
ぎょっとして王子は私を見た。私はことさら平気そうな顔でにっこりとほほ笑む。
「すぐに避難したから、全員無事よ。私物が全部瓦礫の下になって、不便なだけ」
「……そうか、よかった」
「それで、避難所を作りつつ生徒の安否確認をしてたんだけどよ……」
そこまでで、ヴァンの言いたいことは伝わったらしい。王子はこくりと頷いた。
「王子の俺が行方不明で、騒ぎになったと」
「念のため、図書室を調べに来てよかったよ。隠し部屋の中じゃ他の生徒には見つけられないからね」
にこ、とケヴィンが微笑みかける。
ここに来たのは偶然だけど、そういうことにさせてもらおう。王子様相手に管制施設がどーのとか、詳しい話はできない。
「……状況はわかった、すぐに避難所に合流しよう」
「俺が案内するよ。詳しい状況も歩きながら共有しよう」
ケヴィンが本をよけて作った通り道に立つ。王子とヘルムートはそれに従って歩き始めようとして……そこで足を止めた。
「うん? リリアーナ嬢たちは? 行かないのか?」
そこはきづかず行ってほしかったかなあ!!
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