仲良くしましょう?

 私と婚約者たちの緊張した空気に気づいているのかいないのか、ケヴィンはにこにこと笑っていた。


「俺も君と知り合えてうれしいよ、リリアーナ嬢」

「リリィでいいわよ。あなたとは親しい付き合いがしたいから」


 ほぼオブラートが破けた状態の宣戦布告を聞いて、エヴァ、ライラ、フローラの三人の顔が固くなる。侯爵家の娘がアプローチかけてきたら慌てるよねー。

 最初に切り込んできたのは、強気少女ライラだった。


「リリアーナ様? もうすでに親しい方のいるケヴィン様に、『親しく』なんてはしたないんじゃないかしら」

「そうなの? もうすでに3人も仲良しがいるんですもの、4人でお話しても構わないんじゃないかしら」


 みんなで仲良くしましょうよ、という提案にライラの顔がひきつる。その隣でエヴァがおっとりと笑った。


「リリアーナ様は、ずいぶんと心が広い方なのね。ふふ……でもみんなでずっと仲良くできるかどうかはわかりませんわよ」

「あら、どうして?」

「だって、私たちはそれぞれ、侯爵様やエルマ様に推していただいて、ケヴィン様と親しくしているんですもの。おひとりでは、私たちほど親しくはできないんじゃないかしら」


 婚約者になるには、親族からの推薦が必要、と。

 婚姻は家と家を結ぶ問題だから、彼女の指摘はおおむね正しい。

 ただ、君たちの目の前にいるのは、ハルバードの我儘令嬢だ。その程度で引くようなら、こんなちょっかい出してない。


「まあ! それならお父様にお願いしてみようかしら。騎士団と侯爵家、両方から推薦してもらえれば、いいわ!」


 後ろ盾が必要というなら、いろいろ手段があるんだよねー。

 家格はモーニングスターと同じ侯爵家だし。

 本当にその手段を使っちゃうかどうかは別として。


「え? 俺と仲良くするのに、特に資格はいらないよ? 普通に遊べばよくない?」


 ケヴィンはきょとんと首をかしげる。

 わかっているのか、いないのか。

 ゲーム通りの性格なら、婚約だ推薦だってややこしい問題に発展しそうなのを察して、わざとはぐらかすくらいはやりそうだけど。


「あ……あの……リリアーナ様……ひとつ、質問いいですか」


 フローラがおずおずと声をかけてきた。うむ、美少女の上目遣いかわいい。


「私に答えられることなら、なんでもどうぞ」

「リリアーナ様は雷の魔法をお使いになると聞きました。本当なのですか?」

「よく知ってるわね」


 3つも年下の子に雷魔法のことを聞かれるとは思わなかった。

 ライラが苦笑する。


「フローラは魔法が好きなの。私たちもよく、魔法を見せてってせがまれるわ」


 まだ11歳のフローラは、彼女たちにとってもライバルというよりは妹のような存在らしい。普段から彼女のちょっとした我儘を許容しているようだ。


「俺も雷魔法には興味があるな」

「ケヴィン様のお願いというなら、お見せしましょうか」


 この3年で雷魔法の利用方法は研究が進んでいる。

 怪我しない程度のパフォーマンスなら、できるようになったんだぞー!

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