その武器は呪われていた!
工房の地下から発見されたのは、小柄で痩せた男の人だった。
髪の毛もおヒゲももじゃもじゃなところは、いかにもファンタジー世界のドワーフ! って感じだけど、痩せてやつれているせいか、武器職人には見えない。
看護が必要な病人だ。
店まで連れてきて、ソファに横たえると職人さんは、ぜい、と苦しそうな息を吐いた。
「あんた……たちは……?」
「この店ごとあなたを買ったお嬢様よ。安心して、無理に働かせる気はないから」
「はあ……」
「自分の名前は言える?」
「オラの名前……は……マリク……」
喋ること自体がつらいのか、そこまで告げて職人マリクはまた、ぜい、と息をつく。
そして、彼の名前を聞いた私も、息をのんだ。
「呪われしマリク武器……?」
「リリィ、知ってるの?」
「う、ううん! 似た名前の職人さんがいたから、ちょっと気になっただけ!」
ごまかしつつも、私の心臓はバクバクだ。
気になったどころじゃない。
この世界で一番ヤバい武器の製造者じゃん!!
といってもヤバいくらい高性能な武器、ではない。
手にしたらヤバいことになる武器だ。
彼の作った武器はすべて呪われているのだから。
呪われた装備、っていうのはRPGなんかでたまに出てくる罠アイテムだ。見た目は豪華だし、パラメータも上がるからと装備すると、呪われて体力低下とか筋力低下とかのデバフがついてしまう。そういう装備は大抵、解呪のイベントとワンセットになっていて、呪いを解くとデバフが解除されたり、さらにパワーアップした武器に化けたりする。
しかし、マリク武器の呪いにそんなご都合主義は存在しない。
ハーティア国民が手にするとその時点で幸運値がほぼゼロになり、あれよあれよという間に不幸に見舞われてデッドエンドに直行してしまう。解呪しようにも、運勢がめちゃくちゃ悪い状態なので、祝福を扱う神殿なんかに行く途中で空から隕石が降ってきたりして命を落とす。
まさに、初見殺しの極みの罠である。
製造者のマリクはゲーム開始時点で死んでいたため、名前以外の情報は一切残されていない。調査しようにも、マリクに関するものに近づいた時点でだいたい呪われて死ぬので、聖女であっても謎が解けないのだ。
マリクが何故、こんなにもハーティアを恨んでるのか疑問だったんだけど……工房に売られて死ぬまで働かされたら、そりゃー呪いのひとつくらい残したくなるよね。
危ない危ない。
助けておいてよかった。
こんな危険な武器職人さんは、手当をして早めにこの国からお引き取り願おう。
「生まれはどこなの? ついでだし、故郷まで送り届けてあげるわよ」
「そ、それは困るだ!」
「え?」
捕まってたんだし、故郷に戻るのって嬉しいんじゃないの?
「オラ、
「ええ……」
どうやら、職人マリクは伝説上の金属を求めてハーティアに来てしまったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます