2 作戦会議・裏
「そうだよ、話が終わったら、もう一つ相談しときたい……」
「なんだよ?」
ダルが深刻そうにトーヤに切り出した。
「リルさんだよ~」
「ああ」
思い出してトーヤが笑う。
「あの人、どうやったらもうちょっと離れててくれるかな?」
「う~ん、おまえの世話役になったことがうれしくてたまらんらしいからなあ、離れてくれるかどうか」
「困るよ~」
「そう言われても」
またトーヤが笑う。
「トーヤ、楽しんでるだろ?」
「少しな」
正直に認める。
「まあ、嫌がられる方法ならないこたないが……」
「どうすんだよ!」
飛びつくようにダルが言う。
「ミーヤの代わりに来た時にな、ちょっと、やらしい雰囲気作ったら逃げてった」
「やらしい雰囲気?」
「疲れたから足腰
「あ、そりゃだめだ……」
ダルががっくりと頭を落とす。
「昨日、俺が疲れた顔してたら自分から肩でも揉みましょうかって言ってきた」
「なんだよそりゃ! いいじゃねえか」
「よくねえよ!」
ダルが声を荒げた。
「まあ、あれか、ダルはアミちゃん一筋だし、変なことになっても困るもんなあ」
「だから、そんなんじゃねえってのに~」
「しかしあれだな」
トーヤが眉間にしわを寄せた。
「俺が言ったら逃げたくせに、ダルには自分から言うのかよ、なんか気に入らねえな」
「そりゃ、トーヤの言い方のせいじゃねえのか?」
「まあ、わざとそういう言い方はしたが……そんじゃ言い方次第で揉んでくれたのかな?」
「だからあ、そういうこと考えるからだよ」
「いやあ、なかなかべっぴんで色っぽいだろ、リル?」
「いや、そらまあ」
「な?」
「だからってな、仮にも宮の侍女だぞ、そんな目で見たらいけないだろ?」
「侍女じゃなかったらいいのか?」
「いや、そうじゃなくてだな」
「そうか、もったいないことしたな~」
「ちょ、変なこと考えてないよな?」
「変なことって?」
「いや、その……」
「ん、なんだ? はっきり言ってみろよ、え?」
「もういいって!」
「ダル君はかわいいな~」
ケラケラ笑う。
と、扉がノックされた。
「ミーヤです。入っても構いませんか?」
「ど、どうぞ!」
それまでダルにもたれかかってからかっていたトーヤの背がピッと伸びた。
ミーヤが部屋に入って扉を閉める。
「ダルさんがまだこちらにいらっしゃるとのことですが、お食事はどうされますか? こちらでご一緒に?」
「1人か?」
「はい」
ダルがホッとしたような顔をする。
「どうなさいます?」
「あーえーとな……」
トーヤの慌てたような様子にダルがちょっと首を傾げるが、それどころではないと急ぎミーヤを呼ぶ。
「ミーヤさん、ちょっとこっちに」
「はい?」
ミーヤが近寄ってくる。
「リルさんのことなんだけど」
「はい、リルがどうかしましたか?」
ダルの
「いやあ、リルさんにはさ、あの、トーヤの仕事のこととか言わない方がいいよね?」
「それは、多分そうかと」
「それで、そういう話もしたいし少しだけ距離開けたいと思うんだけど、一生懸命でね、ちょっと困ってるんだ」
「そうなんですか……」
「トーヤに相談したらちょっといやらしいこと言ったら離れてくれるんじゃないか」
「おい、そんなこと言ってないぞ!!」
トーヤが慌てたように叫ぶ。
「俺は肩揉んでくれって言ったら逃げたって言っただけじゃねえか!」
「え、そうだっけ?」
「そうだよ!」
「だって、俺には自分から肩揉もうかって言ってきたから困るって言ったら」
「いや、だから」
「違う言い方したら揉んでくれたのかなって」
「いや、ちょ……」
ミーヤがコホンと一つ咳払いをした。
「ようするに、リルがずっとおそばにつきっきりでは困ることもある、という話で構いませんね?」
「うん、言ってみれば。邪魔にするわけじゃないんだよ? でも困ることもあるなあって」
「そういうお話であれば、リルと交代して私がダルさんのお世話をするということにしたら解決する、という問題ではありませんよね?」
ミーヤがそう言う笑顔に、なんとなくダルも怖いものを感じる。
「う、うん、そういうことになるね」
「それでよろしいですか?」
にっこりしたままでクルリと首を回転し、トーヤを見る。
「も、もちろんです!」
「そうですか」
ミーヤが真面目な顔に戻って何かを考える。
「それでしたら、一度マユリアとのお話の場にリルもご一緒させていただいたらいいかも知れません」
「え、そうなの?」
「ええ。さっき私と一緒にお部屋に残ってお話を聞けると思っていたとがっかりしていましたから、一度そういうことがあって満足したら落ち着くかも知れません」
「なるほど」
「でもなあ、リルさんも一緒にできるような話ってあるかな……」
「あれ、いいんじゃねえか?」
「あれ?」
トーヤがダルが宮に雇ってもらうという話を持ち出す。
「ああ」
「その役職の名前とかをまた考えるってマユリアが言ってただろ? それを一緒にやってもらったらどうだ?」
「そうか、なかなか大きな仕事だよな」
「だろ?」
ダルは満足したような顔をしていたが、トーヤはやっぱりまだちょっとミーヤが怖かった。
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