第204話 深夜ラーメン(百合。同棲)

「ラーメン食べたい!」

「……この深夜に?」

 テレビでラーメン名店特集なんて観た日には、そりゃそうなる。

「だって、これ観てたら食べたくなっちゃったんだもん」

「だからグルメ番組は夜に観るなって言ってるでしょ……」

 呆れ顔の彼女に、手を合わせる。

「ねー、お願い!」

「……はあ。二人で一袋、半分こしよ」

「やった!」

 まず、お湯を沸かしてから。乗り気でない割に、彼女はてきぱきと材料を出していく。

 袋ラーメン。もやし。ポン酢。レモン果汁。料理酒。

 もやしは、洗ってレンジ可能なボウルへ。それをレンジで一分から二分。

 お湯が沸いたらラーメンを投入。そこへちょっとお酒も入れる。

 二つお椀を出して、粉末スープを分けて入れる。更に、ぽん酢少々にレモン果汁少々を追加して。

「うーん。やっぱりこのひと手間があるから美味しいんだね!」

「そうだね。面倒だけど 」

 彼女がさらっと言う。

「すみません……」

「……でも。嫌じゃないよ」

 彼女は何でもない風に、

「愛があるからね」

 そう言った。

「……」

「……」

 私は、その横顔を凝視した。一気に熱が上がってくる。彼女の方も同じで、どんどん顔や首があかくなる。

「そ、そっちまで照れないでよ!」

「や、だって普段あんまそういうの言わないからっ!」

「そうだけど!」

「……」

「……」

「ね」

 私は、彼女を後ろから抱き締めた。肩に顎をのせて、耳に唇を寄せる。

「食べたら、シたいな」

 彼女の耳は、もはや燃えるように朱い。

「食欲の次は、性欲かよ」

 悪態をつく彼女だが、お断りはない。

「……洗い物、してくれるなら」

「! 喜んで!」

 私が強く抱き締めるのと、タイマーが鳴るのは同時だった。


 END.


 こちら(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816927862456039980)の二人。付き合って、大人になって、一緒に暮らしています。


 

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