第93話 そういうんじゃないから、仕方ない(付き合ってない。漫画同好会の男女)
※『そういうとこだぞ』(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816452220437783755)、『ネタがない』(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816452220437783755)、
『今日も今日とて副部長が面倒くさい』(https://kakuyomu.jp/works/16816452220371917465/episodes/16816700426205288559)の二人。
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漫画同好会の部長と副部長。
「お前さー、絵葉と付き合ってんの?」
「は?」
クラスメイトから聞かれ、自分でも引くくらいの低い声が出た。
地の底から聞こえる呪われた声とか、そんな感じの。
「うっわ、すっげ嫌そうな顔」
クラスメイトが、可笑しそうに笑う。
「ってことは、絵葉のことが好きってわけでもねぇのか」
「そういうんじゃないな」
好き嫌いで言えば好きだが、たぶん、こいつの言うそれは、そういうことじゃない。
ゆえに、そうじゃない。
「じゃあ、あんまり一緒にいるのもアレじゃね? 勘違いされね? 彼女出来ないぞ?」
「何だいったい。あいつとは部活が一緒でお互い幹部だから一緒に居る時間が多いだけだって。何でそんな絡んで来るんだよ」
そいつは、ニヤニヤした顔で、俺の肩に腕を回して来た。
ちょ、近い。やめろ。
「俺の幼馴染がさ、お前のこと好きなんだよ」
「……はあ?」
おさななじみが、俺を?
え、何その胸キュン展開?
久々に俺の心は高鳴ったけど。
「でも、絵葉のこと気にして告れないから、内情探ってくんねって言われたわけよ」
「……あーそー」
次の瞬間、何だか萎えた。
あー……ねー……。
絵葉が気になるから告れない、かー。ねー。
「な、気になるか?」
「ならないと言えば嘘になるが……」
そう、嘘になる。
そりゃそうだ。
誰かに好かれるなんて、やっぱり気分がいいものだから。
「けど、絵葉とはそういうんじゃないからな」
「なら」
「そこを勘違いされるんだったら、ちょっとなって思う」
そう、ちょっと。
ちょっと、いやだいぶ、面倒くさい。
「じゃ、そういうことで。部活だから」
「そんな、ちょ、待っ」
俺は、やれやれとため息を吐いて教室を出た。
やれやれ。
自分でフラグをへし折っちまった。
けどまあ。
しょうがないもんな。
「お、部長、おっそいぞー?」
部室に来るなり、絵葉が、ニタニタ笑って俺を指差した。
イラッと来るな。その笑顔。
いつもはお前の方が遅れて来るくせに。
「うるっさいわ」
べしっと頭を張ったおす。
はー、ホント。
そういうところ。
「いったー!? お前、何さまのつもりだー!?」
俺は、ギャンギャンわめく絵葉の隣に、どっかと座る。
「部長様だよ。ほら、とっとと部会始めんぞ」
恋愛じゃない。
だけど、この位置。
この位置がいいから、仕方ない。
まったくもって腹立たしが、仕方ないのだ。
END.
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