第41話 もしかしたら、なんて無いんだよ(百合。片想い。結婚式の帰り)


「あのとき、告白してたらって思わないの?」

 ミコの結婚式の帰り。華乃が言った。

「ミコに告白してたら、この未来が変わったかもって」

「……思わないよ」

 私は、引き出物の入った袋を持ったまま、うーんと背伸びした。

 ダンベルを持ち上げるように、ぐいっと。

「きっと告白したって、ミコはアイツを選んで、そして今日、私は結婚式であの子たちを祝う」

 華乃の方を見て、笑う。

「これは、決まった未来だったんだよ」

「……けど」

 何故か、華乃が泣きそうな顔をしていた。

「ずっと、泣くの我慢した笑顔してたくせに」

「今まさにアンタのが泣きそうだけど」

「だって!」

 アンタが辛いと、私も辛いから……。

 か細い声で、華乃が言う。

 私は、ふっと思わず笑みを零した。

「……大丈夫だよ」

 心の底から、そう思った。

「そうやって言ってくれる人がいるから」

 涙は、あの日から出ていない。

 諦めたからには、潔く、前を向こうって決めたから。

「だから、私は大丈夫だよ」

「……意地っ張り」

「知ってる」

「今から、美味しい珈琲屋さん、連れてったげる」

「ありがと。料理は美味しかったけど、珈琲はいまいちだったものね」

 明日からも、きっと私は倖せだ。


 END.

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