第40話 永遠の夢は見ない(百合? 片思い?)


 いつまでも、手を繋いで。

 ずっと仲良く。

 お友だちでいましょうね。


「……説得力ねぇな~~~」

 私は、ペンタブを投げ出した。

 画面の中では、二人の老女が薔薇園で手を取り合い、微笑み合っている。その奥には、彼女たちの少女時代の姿。

 リクエストは、『百合一歩手前の友情が永遠のものであると匂わせる光景』。

 お耽美風で。

「こんなの、あるわけねぇじゃん」

 私は呟いて、ふとベッドサイドに飾ってあるロザリオを見た。

 往年の名作に影響を受けて、あの子と揃いで買ったロザリオ。

 光沢のある真っ白な石。小ぶりの十字架。

 私の通っていた学校は、カトリックの幼小中高短大一貫の女子校だったから、当然のようにロザリオは購買部で買えた。


『約束しよう。ずっとずっと、私たち、友だちでいようね』


 そう笑っていた彼女からのメッセージが途切れがちになったのは、高校を卒業してすぐだった。

 私はどうすることも出来ず、ただ、疎遠になっていくのを黙って受け入れた。

 仕方ない。これが、現実。当たり前のこと。

 寂しくない。哀しくない。別に、他の友だちも、新しい友だちも、いるし。

 こんなこと、よくあることだ。

 そんな風に、受け入れているけれど。

「……じゃあ何で、私は百合を描いてるんだろうね」

 お絵かき系SNSに私がアップするのは、百合漫画ばかり。

 それも、少女たちの。けっして、彼女たちは大人にならない。未来予想図は描かない。

 想像出来ないから。

 想像したら、寂しくなるから。

「はー……」

 自分のままならない心に、私は特大のため息を吐いた。


 END.

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