第33話 君の夢を叶える(百合。高校生。恋人未満親友以上のぐだぐだ会話)


「はー、綺麗になりたい」

「なってどうすんの」

「美女侍らしたい、美女」

「自分が綺麗なのに?」

「綺麗な自分に、綺麗な美女が侍ってたら、それはもう主観的にも客観的にも美しくて最高じゃない?」

「そういうもんか」

「そういうもん」

「で、侍らしてどうすんの」

「そこよ」

「そこ?」

「侍らすのはいいんだけど、そっから先の妄想があんまり湧かないんだよね」

「何かないの?」

「無い。ただ私の周りに美女がいて、『わー、綺麗だなー』って思って、それを肴にお酒でも飲んで『はー、美味しい、極楽だなー』って思って」

「それでおしまい」

「そう。あ、あとはそのお酒を美女に振る舞って『かんぱーい!』ってして、みんなで『美味しいね』って笑い合うの」

「……世界がみんなアンタだったらいいのに」

「えー、そうかな? こんな妄想なのに」

「そんな妄想だから」

「アンタ、私のこと好きだよねぇ」

「大好き。すっげ好き。美女じゃないけど、アンタになら侍っていい」

「マジで? 綺麗なおべべ着て、私の隣にいてくれるの?」

「そう。それで『お酒美味しいね』って言う」

「何それ、最高じゃん」

「それなら叶うんじゃない?」

「いいねいいね。未来への約束ね」

 少女たちの他愛のない約束は、教室の窓の外、遠い空に吸い込まれて行った。


 END.

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