第17話
幾度となく失望を繰り返しながらも、僅かな希望を捨てきれないアメリアは、密かな調べものを続けていた。
随分時間は掛ったが、セルヴィスの黒い痣の答えに近づくヒントのようなものを、やっと見つけた気がした。
それは、全く番とは関連のない、医療関係の古い専門書に書かれていた一節だった。
ある病の治療薬を摂取することで、副作用として番の痣の外観と機能に影響が出ることがある、という内容であった。
しかし、その病は医療の発達によって、現在は完全に廃れてしまっている類のもので、今時そんな病を発症するものは誰一人も居なかった。
したがって、その病を治療するための薬も出回ってはいない。
◇
何か関係があるような気がするのだけれど・・・。
セルヴィス様はご病気なの・・・?
それにしても、今の時代にこの病に罹るような事はありえないはずだわ。
でも、もしかすると違う病に罹っていて、似たような成分の薬を摂られているのかも・・・?
アメリアは仮説を立てた。
セルヴィスは何らかの病に罹っているのかもしれず、治療の為に摂取している薬物による副作用で、現在のような状況になってしまっているのかもしれない、と。
専門書にあった、その病の治療薬に関する項目の最後には、但し書きがつけられていた。
『適切な摂取量であれば、その副作用は一時的なもので、後遺症が残るようなことは無い 』
アメリアは希望の光を見たような気がした。
まだ可能性はあると。
病が完治し、薬を服用する必要が無くなれば、彼の痣は色を取り戻して、きっとアメリアに本当の笑顔を見せてくれるのだと。
セルヴィスが病を患っているかもしれない、ということは一種の不安ではあった。
しかし、今までずっと、八方塞がりの現状に何もできず、ただ苦しみの中に立ち止まっている事しか許されなかった彼女は、やっと自分自身の中で、これから具体的に進んでいくべき方向が明らかになったように思えて、少し嬉しかった。
アメリアの心は、かつての輝きを微かに取り戻したように見えた。
どんなに困難だったとしても、自分が必ずセルヴィスの病を治して見せる、と彼女は心に誓ったのだった。
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