第23話 パートで働く

 私は経済的に益々苦しくなってきたのでパートで働く事にした。車で20分位の所にある拓哉の勤めるスーパーとは別の隣町のスーパーで掃除をする人を募集していたのだ。時間は朝8時からお昼12時迄の4時間で交通費もあり時給も良かった。下の子の桃はまだ3歳だった。


 その頃私が住んでいる町にはまだ保育所がなかった。あるのは地元のお寺が経営する児童館だけだった。そこは4歳から預ける事が出来たので桃を預ける事は出来なかった。翔は小学1年生、蓮は児童館に行っていたので桃は一人で留守番させることにした。出かける前におやつとおむすびを用意しておいたらお利口でお留守番していてくれた。3歳の子供を一人で留守番させるなんて今思うと考えられない事だがあの頃住んでいた環境が安全だったから出来た事だろう。今だったら子供への虐待に当たるかもしれない。


 1ヶ月位そうした生活をしていたらスーパーのある隣町に住んでいる母に知られてしまい「そんな小さい子を一人にして何かあったらどうするの?」と言われ、私も返す言葉が見つからず迷惑掛けたくないと思っていたが結局、仕事に行く前に実家に預ける事にした。と言っても母もその頃は働いていたので実際には祖母に見てもらう事になった。桃にとってはひいおばあちゃんだ。祖母は80歳を超えていたがとても元気で桃とよく遊んでくれた。私も安心して仕事が出来て本当に良かった。


 私は半日パートに出る事になって一時嫌な事も忘れて気分転換ができ働く事がとても楽しかった。

おまけに拓哉が服役中は拓哉が新たな借金を作ったり浮気をする等の心配な問題もなく帰りが遅くいつ帰るかわからない拓哉を待つ必要もないので経済的には苦しかったが結婚生活の中で一番心の安定した1年間だった。子供達も生まれた時から拓哉のいない生活に慣れていたので問題なかった。元々子供達の運動会や発表会にもいつも仕事を休んで行くと約束してくれるのだが殆んど見に来てくれた試しが無かった。いつも期待させておいて裏切られるのでしまいには私も子供達も期待していなかった。その方が気持ちが楽だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る